ウラシマ・エフェクト

竜宮から帰って驚いたこと。雑感、雑想、雑記。

Entries from 2019-01-01 to 1 year

プラッツェン高地の歩き方

アウステルリッツ三帝会戦──とは、とくべつに歴史に興味がなくとも、トルストイの『戦争と平和』や世界史の教科書によって知るひとも多いはず。 この名称はしかし、ナポレオンがプロパガンダのためにひろめたものにすぎない。実際の戦場は、現在のチェコ語の…

レイモンドと井上の群馬音楽センター

数年前の秋、西ボヘミアはプルゼニュを訪れたとき、駅前のバス停に突として現れたのは、《高崎白衣大観音》であった。──それは日本の文化に焦点をあてた交流行事を知らせるポスターであったが、プルゼニュ市にとって日本といえばまず、いわゆる姉妹都市協定…

ドゥコヴァニの原発をめぐって

影響は許容できる──モラヴィアのドゥコヴァニ原発で計画されている新たなプラントの建設に関して、8月30日、チェコ共和国の環境省は、最終的な環境アセスメントを公開した。直接の建設許可には当たらないが、建設に肯定的な内容であったため、事実上のゴーサ…

ボヘミヤの伍長?

ボヘミアの伍長──というのは、ときのドイツ国大統領パウル・フォン・ヒンデンブルクが、アードルフ・ヒトラーをさしていった表現だという。久しく人口に膾炙した謂いであるものの、ヒトラーは伍長でもなければ、ボヘミア生まれでもなかった。 こういった場合…

スカイ・ハイ──香港から来た男

photo by Florian Wehde 2019年の春から初夏にかけて、逃亡犯引き渡し条例の改正をめぐり、百万人単位の参加者を擁する抗議活動が断続的につづくようになった。特別区行政長官・林鄭月娥の失脚は免れまい。選挙で選ばれながらも、民主主義を崩壊に導いている…

オリンピックとガラパゴス・ペイ

東京五輪まで、残すところ一年を切った。まるで興味がなかったが、各界それぞれの健気な取り組みが報道されるにおよんで、また、予期せぬ雨で東京の下水処理システムの欠陥が明らかになるなどして、注意を引かれることになった(水質悪くスイム中止 「手も見…

日本のいちばん長い日々

先日、日本映画フリークに遭遇した際、つきあってピヴォを呷りながら、酔った頭でいろいろ考えた。 昨今の日本映画の低水準ぶり(少なくとも欧州ではそういう評価になっている)を鑑みるに、「他人様にお奨めできる日本映画ってなんだろうか」と、あらためて…

タンポポ──欧州、ラーメン、日本人

photo by masaaki komori 日本人だろ、日本人なら、ちょっと相手してやってくれよ──といわれて、ピヴォ(麦酒)を飲りながら、日本映画フリークとの歓談につきあった。紹介された人物は、すでに10杯ちかく呑んでいたらしい。スロヴェニア出身だという同僚の…

陸自戦車、ついに中東へ

陸上自衛隊の61式戦車が、ヨルダンに無償貸与されることになった。といっても、かの地の博物館に鄭重に展示される資料として。日本で野ざらしのままにされてしまう運命とあらば、渡りに船であろう。かつて湾岸戦争やイラク戦争で、米国からの参戦圧力が話題…

津久井やまゆり事件から3年

「百合の花」というと仲夏の季語で、日本原産の「ヤマユリ」にかぎっても、夏に花をつける品種がおおい。6月30日生まれの誕生花でもあるそうだ。つとに19世紀、ウィーンの万博で紹介されたこともあって、もともとリリーの人気がある欧州に、球根がさかんに輸…

コクヨの独善とぺんてるの憤慨

ヴィエトナムで自動二輪車全般が「ホンダ」と呼ばれることは、よく知られている。ほかのメイカーをさしおいて、ホンダの製品がひろく親しまれてきた証左といえる。 チェコ語の口語表現には、"pentelka(ペンテルカ)"という語があって、ぺんてるの製品ないし…

あわやテネリフェ。危ないアシアナ。

2019年7月21日、那覇空港で、日本トランスオーシャン航空(JTA)の旅客機が着陸降下中、アシアナ航空の出発機が滑走路に進入する事案があった(OZ171便、エアバスA321型機)。 JTAのボーイング737は、滑走路の手前わずか3.7キロ付近で着陸復航したという。あ…

だめだコリャ。

チェコ語で「ズムルズレー・ラメノzmrzlé rameno」。ドイツ語では、英語からの借用で「フロウズン・ショールダーFrozen Shoulder」という。つまり、ヨーロッパ諸語ではたいてい「凍った肩」という謂いをするようだが、要は、日本語でいう五十肩、あるいは四…

よんどころなき事情にうってつけの日

夏至は過ぎたとはいえ、日はながい。 アルプス以北のヨーロッパは、じつに北海道の北端より緯度が高く、廃止予定のサマータイムもことしはまだ健在だから、夜9時を過ぎてもなお明るい。──そこで10時まで開いているはずの、フィットネス・ジムに向かったわけ…

ランペドゥーザの女船長

このところ欧州では、カローラ・ラケーテ船長の話がおおきく報道されている。 30そこそこのドレッドヘアの女性は、「Sea-Watch 3」なる、全長数十メートルという巡視艇のような船舶の女船長(カピテーニン)で、地中海に漂流していた40名ほどの難民を救って…

プライムデーにつきKindle本最大70%OFF(2019年7月16日まで)

amzn.to 読書の際、Kindleで読むことが多くなった。 Kindle Paperwhiteという機種の旧い型を使っている。動作の緩慢さや容量に不満を覚えるようになってきたが、いまでも重宝している。 一般的な文芸書や図版の少ない実用書などを読むときに、もっとも適して…

ザッハートルテ【麦酒】

Lucky Bastard/ Hellstrok Sacher dort ザッハートルテといえば、ささやかではあるにせよ、ウィーン観光の目玉のひとつで、これをアインシュペンナーやメローンジュと呼ばれるコーヒーといっしょに試食するのを、世界中からやってくる観光客がたのしみにして…

登戸事件

photo by nick fisher 先日、役所に用事があって出かけ、夕方のはやい時間に自宅へ歩いていると、飲み友達にでくわした。といっても、のんでいるとき以外に会うこともほぼなく、このところは一緒に飲むこと自体が、めっきり減っていた。 ──その男の脚に、ち…

ニキ・ラウダ逝去

ニキ・ラウダが亡くなった。昨夏の肺移植手術、そして今年の1月には入院したという報道もあり、健康が心配されていた。やはり1976年の事故が遠因であろうか。 アーノルド・シュワルツェネガーと並ぶ、現代オーストリアの著名人──というふうにORFのニュースで…

Caran d'Ache の白いペン

かつて、なにげなく借りた筆記具が、Caran d'Ache のものだったと知ったのは、そのずっと後のことで、ジュネーヴの高級ブランドと知っていたらば、借りること自体が躊躇われたかもしれない。──さいきん、創業100周年を迎えたそうである。 www.carandache.com…

国名や外名、その表記について

外務省の国名表記の問題の記事がよく読まれているようなので、そのあたりのことで思いついた由無し事を、覚え書き程度に書き留めてみようとおもう。 合衆国か、合州国か 第三帝国? 中国か、支那か ボヘミア・モラヴィア・シレジア(ベーメン・メーレン・シ…

"ブレグホウク"?──チェコ軍次期汎用ヘリ機種選定の行方

photo by urashima-e 2019年末までに、Mi-24/35の後継として12機の双発汎用ヘリを取得する旨、チェコ共和国の国防省が発表した──とニュースにあったのは、数か月まえのことだった。 ところが、発表は曖昧すぎた。このMi-24、あるいはその後期輸出型のMi-35は…

シェレメーチヴァの航空機火災

現代の旅客にとって、航空機火災ほど恐ろしいものも、そうあるわけではない。 日本では、いわゆる「10連休」の最終日。欧州では、日曜日と対独戦勝記念日に挟まれた月曜日という日にはいってきたニュースは、モスクワで起きた悲惨な航空機事故だった。 アエ…

令和前夜のチェコスロヴァキア

チェコ共和国にいて、地方の飲み屋で令和を迎えることになった。明くる5月1日はメーデーの祝日である。 平成が最後の数分をむかえるころ──といっても、むろん日本時間ではない。日本ではとっくに令和になっていて、宮内庁職員がおそらく徹夜で準備した儀式が…

ブルーブラックのゲル

日本では「ゲルペン」などと呼ばれているポールペンがある。英語でいえば「ジェル」だろうが、あえてドイツ語風に「ゲル」とした、最初のメイカーはどこなのだろう。──そのゲルペンが取り上げられた動画をみて、思い出した。 三菱ユニボール・シグノ(Uni-Ba…

聖金曜日をめぐって

大革命で第三身分が躍進した結果、フランスの政教分離は既定路線になった。だから、火災に遭ったノートル=ダムは人類の宝といえども、国が音頭を取る再建に富者が大枚を寄付するのを、だれもがだまって是認するということはあり得まい。ジレ・ジョーヌたちも…

ノートル=ダムの火災

2019年4月15日、パリの中心「ポワン・ゼロ」の正面にたつ、ノートル=ダム大聖堂で火災が発生した。 大勢が詰めかけた現場付近では、燃え盛る炎をみながら泣き崩れるひともあった。 ct24.ceskatelevize.cz 屋根全体の3分の2が焼失し、およそ90メートルの高さ…

ジューシーな反逆児(7歳)【麦酒】

Tiny Rebel and DEYA NEIPA Tiny Rebelは、2012年、ウェイルズはニューポートに、祖父から醸造の手ほどきを受けたというギャレス・ウィリアムズが、ブラドリー・カミングスとともに立ち上げたマイクロブルワリー。その後の快進撃は、周知のとおり。やはり「H…

令和元年へ。

今月いっぱいで、とうとう平成が終わる。いろいろの手続きが進捗している。 kanpou.npb.go.jp 新元号が「令和」に決まった。「りょう」とも「な」とも読みたくなる字面だけれども──「れいわ」。相変わらずおばかなIMEを搭載しているMacが、すぐに覚えてくれ…

中欧・鉄道テロ未遂犯の逮捕

ドイツ鉄道が誇る高速列車・ICE(イメージ) シリアでは、イスラーム国(IS)の拠点がすべて制圧されたと伝わっている。BBCの記者は、これで終わりではない、と数日前、警告した。 www.bbc.com 予言を裏づけるかのような、逮捕劇が中欧で起きている。 ドイツ…