ウラシマ・エフェクト

竜宮城から帰って驚いたこと。雑感、雑想、雑記。日欧ブログ……?

チェコスロヴァキア

イジー・メンツルによる架空の村

アカデミー賞監督、イジー・メンツルが亡くなった。享年82。数年前に、髄膜炎の手術がかなり大がかりだったと伝えられていたから、その後の容態が案じられてはいた。 1938年プラハ生まれ。1962年にアカデミーの映画学部"FAMU"を卒えると、やがてチェコスロヴ…

プルゼニュのパットン記念館

photo by Ye R プルゼニュ市の〈パットン記念館〉を訪ねたのは、もう何年も前である。2005年に複合施設「ペクロ(地獄)」内に開設された資料展示館であった。ことし6月の報道によると、その古びた「地獄」とは仮の住まいであった由で、もとより本来の物件の…

マター=オヴ=ファクト

photo by Carina Chen 夏のある日。翌日にはダブリンを発つ予定だった。ファーストフードの昼食を終えようというとき、にこにこしながらそいつはやってきた。──チャイニーズかい、とはまたご挨拶だ。そう訊かれると、心外だな、と感ずるのがわれら日本人の心…

アードルフ・ロース生誕150周年

当世の流行りとはいえ、銅像を打ち倒す運動には賛同しかねる。偉大な篤志家であったが奴隷も所有していた──ということになると、ヴァンダリズムの対象になるらしい。だが、200年も300年も遡及して往時の常識を今日の価値観で断罪することに、妥当性は微塵も…

チェコ軍の次期装輪式自走砲〈CAESAR〉

ことし令和2年度の富士総合火力演習は、疫禍の時世から招待客なしでとり行われ、かわりに5月23日、YouTubeでライヴ映像配信が実施された。そこには昨年につづいて、最新鋭〈19式装輪自走155mmりゅう弾砲〉の姿があった。国土の道路網の整備がすすんだ結果、…

ビハインド・ザ・マスク・2020

photo by Juraj Varga 世界中で一斉におなじことを体験する機会というのはめずらしい。延期になったオリンピックなど、スポーツ観戦ならあり得るが、それだって興味のない者は観ない。 こうなってみると、各国で焦眉の課題にのぼったのは、石油でも天然ガス…

カレル・チャペクとフゴ・ハースの『白い病』

感染予防のため、集会をとりやめ、人びとにお互いの距離を保つようにと、ときには政府首脳までもが直に呼びかけるなか、馬耳東風のていで遊び歩くひともいる。ドイツでは「コローナパーティ」なる語もできたそうだ。そういえば、若年層は罹りにくく、高齢者…

疫病神の道行き

WHOは、もはや事実を追認するだけの機関になりさがってしまったが、それでも認めるだけましだろう。コロナウイルスによるパンデミックの中心が大陸欧州に移ったことは、つとに明白であった。 学校の閉鎖は、日本政府が打ち出したときは批判の声もあがったが…

地球の裏側の震災報道

photo by Patrik Kopčo 東日本大震災から9年が経とうとしている。といっても、ことしは感慨にふけっている余裕などない向きが多いかもしれない。昨今のコロナウイルスの報道を眺めるに、緊急事態こそ、情報の取捨選択には気をつかわねばと、往時を思い出す次…

ハムスター三点盛り

photo by bierfritze 1) 捨てハムスター 2) ハムスター買い 3) ハムスター氏、the オンブズマン 1) 捨てハムスター イングランド北部・ダーリントンで、ゴールデン・ハムスターが18匹、ロボロフスキー・ハムスターが2匹、散歩中の犬によって発見された。3月3…

スロヴァキアの弾丸

報道によると、「飛翔体」という語が、ぴんとこないからというような理由で政府の発表から除かれたそうである。 北朝鮮がさかんに試射しているものは「ミサイル」と推定されようところだが、これは自衛隊用語ではよく「誘導弾」と呼ばれる装備である。したが…

イラーセクの風化

人間、意に反して何かをやらされたりすると、それに嫌悪感を抱くようになる。そこまでいかなくとも、飽きあきするようになる。──会社の仕事とか、学校の勉強とか、地域の活動とか、なんでもいい。それについて話題にするのはおろか、思い出したりもしたくな…

トマーシュ・ガリグ・マサリク

2月23日は天皇誕生日であった。代替わりによって12月から祝日が移動し、令和のあたらしい歳時記が始まったことになるが、かつて昭和年間には4月であった。さかのぼれば文明開化の世に、さらなる国民の統合に資すべしなどという思いつきからはじまったもので…

ヘイトの大陸

photo by Free-Photos BBCのサイトに掲載された記事によると、大陸ヨーロッパでは感染症にたいする恐怖が、中国人にたいする恐怖や嫌悪をあらためて浮かび上がらせている。日本人とて、欧州で団体観光客としての数的優位を誇っていた時代ならばいざ知らず、…

病に効くスープとは

身内が入院することになり、欧州と日本を往来する生活にはいった頃の話である。当時「手術後に咀嚼できぬ者が、栄養を摂って次の手術に備えなければならない」という難問が持ち上がった。何年も経ったいま現在でこそ、大手食品メイカーの多くが嚥下食と呼ば…

癲狂院のヨーゼフ2世

photo by urashima-e 承前。2020年2月20日は、1790年のヨーゼフ2世崩御からちょうど230年に当たっている。最期は肺病であったというから、だいぶ衰弱していたことだろう。耳ざわりのよいおべんちゃらでお茶を濁すことなく、「快復の見込みはない」と直言した…

ヨーゼフ帝の鋤車

プラハの旧市街広場に、1918年に破壊された聖マリア柱が戻ってくるらしい。再建のための予備的な発掘調査が始まったという報道があった。チェコスロヴァキア建国当時、軍団あがりなどという輩を中心とした群衆によって「愛国無罪」的な破壊行為が横行し、貴…

ヴァーツラフ・ハヴェル小路

ヴァーツラフ・ハヴェル『力なき者たちの力』が、NHKの『100分de名著』に取り上げられ、第一回目が2020年2月3日に放送された。視聴率もなかなかよかったという噂で、意外にも日本人のハヴェルにたいする関心は高いものとみえる。2011年12月に逝去した直前に…

クリスマスには鯉

photo by Jiří Fröhlich 鯉をクリスマス・イヴの食卓に供する習慣は、戦間期に一般に普及した、というのが通説らしい。現在までその文化の広がる領域は、かつての大ドイツ主義を忍ばせる。すなわち現在のドイツ、オーストリア、チェコ、ポーランド等々が…

オストラヴァにおける拳銃乱射事件

チェコ共和国第三の都市、オストラヴァで12月10日の朝7時すぎ、銃の乱射事件が発生した。現場となったのは日本でいうところの大学病院で、6人が死亡、3人が負傷した。被疑者の男も、のちに自ら頭を撃って死亡した。 警察が最初の通報を受けたのは7時19分。施…

ガンブリヌスとは誰だったのか。

ガンブリヌスといえば、ビールの王として名高い。鷗外森林太郎などは「麦酒神」と、その存在をまさに神格化してしまってすらいる。 南独逸の半ば以上を占め、ガンブリヌス(麦酒神)の恵みを受ける豊饒な国に九百三十万の民草を統治するバイエルン国王──十一…

ミラン・クンデラ──世評の耐えがたき軽さ

ミラン・クンデラに、剥奪された市民権がふたたび授与された、と報じられている。日本語では、国籍といったほうが通りが良いかもしれない。 ブルノ出身のチェコスロヴァキア最後の大物亡命作家は、1970年代に亡命して以来、フランス在住である。日本では、む…

世界でもっともうつくしい女

100を超える博物館施設があるというウィーンに、日本からやってくるひとは多いが、ユダヤ博物館をふらり訪れる者は、むしろ稀だろう。けれども、ウィーン市立博物館で町の歴史を概観したあとなどにゆくと、意外な発見があって、ユダヤの艱難の道のりを知る以…

ミロスラフ・ティルシュの像

プラハの日本大使館に用事があって、なにも考えずに朝がた地方から出てゆくと、よりによって到着する時間帯が領事部の昼休みにあたっている──ということがよくあった。 そうなると、小規模な博物館やランチ営業で混み合う飲食店を除けば、時間をつぶす施設な…

ビロード革命30周年とマルチン・シュミートの謎

Photo by Kevin Maillefer 11月17日は「自由と民主政治をもとめた闘争の日」として、チェコ共和国の祝日となっている。ボヘミアとモラヴィアを保護領化したナツィのドイツ当局が、1939年にプラハの大学を閉鎖した日であり、また1989年の、世に言う「ビロード…

聖マルティヌスの日

明日は鴨たべるのか──と、時候の挨拶のつもりで訊いたが、ばかな間違いをしでかしたことに気づかなかった。 質問された友人は、なんのことかとしばらく思案したのち、「カモ(kachna)じゃなくて、ガチョウ(husa)だろ」といった。大笑いした。寒くなってき…

四半世紀とか30年とかのオスタルギー

令和元年11月10日、東京では、ひと月ほど延期されていた祝賀御列の儀が行われ、沿道にたくさんの人がつめかけたと報じられている。この光景は、1993年6月の御成婚のパレード以来であると伝えるメディアもあった。じつに四半世紀以上が経過している。 それに…

南アは、チェコ語でも一語でいえない件。

ラグビー・ワールドカップで、南アフリカに注目していたところ、むかしチェコの大学で、南アフリカの演劇文化についての講義を受けたことを思い出した。内容はほとんど頭に残っていないが。 講師は、かのペトル・オスルズリー教授。日本での知名度となるとく…

狡兎死してクルド烹らる──中欧ファストフード事情から

Photo by Nathalie Dulex ケバブ。旅行の際など、お世話になった向きも多いであろう、ドネル・ケバブ── 大戦後の西ドイツでは、労働力不足からトルコ人移民が歓迎された。結果、ケバブといえば、カリーヴルストやポムス・ロート・ヴァイスなどのB級グルメと…

カレル・ゴット逝去。Gott ist tot...

10月1日の夜遅く、チェコ共和国の国民的歌手、カレル・ゴット(Karel Gott)が亡くなった。80歳だった。2016年から急性白血病を患っており、2019年9月に闘病を公表したばかりだった。 現代チェコ語会話で、人名「カレル Karel」にたいする定型の愛称たる「カ…