ウラシマ・エフェクト

竜宮から帰って驚いたこと。雑感、雑想、雑記。

チェコスロヴァキア

カレル・クラマーシュ──ある親露派の末つ方

この5月下旬で没後85周年をむかえたとのことで、チェコ語メディアがカレル・クラマーシュについてとりあげていた。 クラマーシュについては、以前このブログでもアロイス・ラシーンの記事のなかで、すこし触れた。チェコスロヴァキア初代首相とはいえ、ちょ…

チェコスロヴァキアの「北方領土」と境界のアイデンティティ

Cieszyn ... photo by Aisuma K 国境の町は、大陸欧州に数知れない。訪れてみると興味ぶかい体験がある。 チェスキー・ティェシーンČeský Těšínは、そのひとつ。片割れの名は、チェシンCieszyn。かつてテシェン公国Herzogtum Teschenの都だった。 ティェシー…

シンデレラたちと成長の神話

photo by Alain Audet 2019年末に目を瞑って、ふたたび目を開けたら、2022年元旦だった──というインターネット・ミームがある。まさにそれ。ここ2年間の記憶が、なんだか曖昧な感じだ。 それだから、おおくのひとが節目を実感できる行事や娯楽を欲したのでは…

クリスマスには鯉(2)

クリスマスは、異教の冬至の祭りに由来する。ジェイムズ・フレイザーなどを読むと、そういうことが延々と論証されている。のち、それをキリスト教会が採り込んだものであると。 中部ヨーロッパにおいて、クリスマス・ディナーのさいに鯉をたべる慣らいがある…

チェコスロヴァキアの皿と燻しボック

10月の28日は、チェコスロヴァキア成立の記念日。祝日のプラハでは、まいとしヴィートコフの丘で式典が執り行われる。 そんなとき、皿が割れてしまった。 頭上の戸棚から、ペッパーミルと胃腸薬の瓶が落下した。これまた意想外なカップルが心中したものだ。…

アロイス・ラシーン(2)──暗殺者・ショウパルの謎

「FN・ベイビー・ブラウニング」というのは、.25ACP弾を使用する小型拳銃である。 ブラウニングといっても、サライェヴォで帝位継承者フランツ・フェルディナントを屠って世界大戦への道をひらいた「M1910」でもなければ、諸国の軍隊で採用されるほど火力に…

アロイス・ラシーン(1)──『滅亡した帝国』

アロイス・ラシーンの名は、経済学に明るい向きなら、あるいはご記憶のことだろう。来たる10月18日は、生誕154周年という計算になる。 ラシーンは、第一次大戦時のボヘミアにおいて、カレル・クラマーシュらとともに、反ハプスブルク「抵抗運動」を指導した…

フサークの子ら

photo by Marko Grothe その頃、おなじみの理容師は、タトゥーをいっぱい入れた兄ちゃんで、まいど上手にやってくれるから満足していた。いや、かなり腕がよい。髪の将来的な絶滅が危惧される情況にあっては、奇跡的といっていい仕上がりだった。──チェコ共…

チェコスロヴァキアの将星

〈Hoi4〉というゲーム セルゲイ・ヴォイツェホフスキー(1883-1951) リハルト・テサジーク(1915-1967) ヨゼフ・シュネイダーレク(1875-1945) ヴォイティェフ・ルジャ(1891-1944) 疫禍の春も3月にはいって早々、100万人あたりの死者数がベルギーを追い…

チェコ共和国と比例代表選挙

イタリアではひとあし早く「スーパーマリオ」政権が成立したけれど、今年はおおくの国で選挙を控えており、いっせいに国政の顔ぶれが様変わりすることもありうる。 ひと月ほどまえ、チェコ共和国の憲法裁判所が、平等な投票権と立候補の機会に反するとして、…

西ボヘミアの醜聞──サッカー協会の腐敗

photo by Daniel Kirsch 亡くなったマラドーナは、ピッチにあがるたびに十字を切っていた姿が印象に残っている。ほんの思いつきの乱暴な仮説だが、カトリック諸国のサッカーは、ドイツやイングランドとはやはり一味ちがうのかもしれない。おしなべて「母ちゃ…

ビロード革命の記念日

photo by S. Hermann & F. Richter 今年の記念日 「マルタの祈り」 そもそも──1939年と1989年 今年の記念日 チェコ語の11月、"listopad"とは「落葉月」である旨、まえに書いたが、現代では文脈によって「ビロード革命」を意味することがある。典型的には、"p…

マサリク・サーキットの危機?

photo by Jiří Rotrekl エリシュカ・ユンコヴァー(1900-1994)といえば、初期モータースポーツにおいて名を残した、チェコスロヴァキアの女性ドライヴァーであった。2020年11月16日にGoogleの記念のロゴ“Doodle”に採用されたらしく、生誕120周年を迎えたこ…

死者の日と晩秋の祝日

photo by Adam Nieścioruk 早いもので霜月、11月である。ローマ起源のNovemberは、かつての暦で「九番目の月」を意味するが、チェコ語やポーランド語のlistopadとは、形態素をもとに訳せば「落葉月」とでもなろうか。月がかわったとたん、紅葉した木々の葉が…

イジー・メンツルによる架空の村

アカデミー賞監督、イジー・メンツルが亡くなった。享年82。数年前に、髄膜炎の手術がかなり大がかりだったと伝えられていたから、その後の容態が案じられてはいた。 1938年プラハ生まれ。1962年にアカデミーの映画学部"FAMU"を卒えると、やがてチェコスロヴ…

プルゼニュのパットン記念館

photo by Ye R プルゼニュ市の〈パットン記念館〉を訪ねたのは、もう何年も前である。2005年に複合施設「ペクロ(地獄)」内に開設された資料展示館であった。ことし6月の報道によると、その古びた「地獄」とは仮の住まいであった由で、もとより本来の物件の…

マター=オヴ=ファクト

photo by Carina Chen 夏のある日。翌日にはダブリンを発つ予定だった。ファーストフードの昼食を終えようというとき、にこにこしながらそいつはやってきた。──チャイニーズかい、とはまたご挨拶だ。そう訊かれると、心外だな、と感ずるのがわれら日本人の心…

アードルフ・ロース生誕150周年

当世の流行りとはいえ、銅像を打ち倒す運動には賛同しかねる。偉大な篤志家であったが奴隷も所有していた──ということになると、ヴァンダリズムの対象になるらしい。だが、200年も300年も遡及して往時の常識を今日の価値観で断罪することに、妥当性は微塵も…

チェコ軍の次期装輪式自走砲〈CAESAR〉

ことし令和2年度の富士総合火力演習は、疫禍の時世から招待客なしでとり行われ、かわりに5月23日、YouTubeでライヴ映像配信が実施された。そこには昨年につづいて、最新鋭〈19式装輪自走155mmりゅう弾砲〉の姿があった。国土の道路網の整備がすすんだ結果、…

ビハインド・ザ・マスク・2020

photo by Juraj Varga 世界中で一斉におなじことを体験する機会というのはめずらしい。延期になったオリンピックなど、スポーツ観戦ならあり得るが、それだって興味のない者は観ない。 こうなってみると、各国で焦眉の課題にのぼったのは、石油でも天然ガス…

カレル・チャペクとフゴ・ハースの『白い病』

感染予防のため、集会をとりやめ、人びとにお互いの距離を保つようにと、ときには政府首脳までもが直に呼びかけるなか、馬耳東風のていで遊び歩くひともいる。ドイツでは「コローナパーティ」なる語もできたそうだ。そういえば、若年層は罹りにくく、高齢者…

疫病神の道行き

WHOは、もはや事実を追認するだけの機関になりさがってしまったが、それでも認めるだけましだろう。コロナウイルスによるパンデミックの中心が大陸欧州に移ったことは、つとに明白であった。 学校の閉鎖は、日本政府が打ち出したときは批判の声もあがったが…

地球の裏側の震災報道

photo by Patrik Kopčo 東日本大震災から9年が経とうとしている。といっても、ことしは感慨にふけっている余裕などない向きが多いかもしれない。昨今のコロナウイルスの報道を眺めるに、緊急事態こそ、情報の取捨選択には気をつかわねばと、往時を思い出す次…

ハムスター三点盛り

photo by bierfritze 1) 捨てハムスター 2) ハムスター買い 3) ハムスター氏、the オンブズマン 1) 捨てハムスター イングランド北部・ダーリントンで、ゴールデン・ハムスターが18匹、ロボロフスキー・ハムスターが2匹、散歩中の犬によって発見された。3月3…

スロヴァキアの弾丸

報道によると、「飛翔体」という語が、ぴんとこないからというような理由で政府の発表から除かれたそうである。 北朝鮮がさかんに試射しているものは「ミサイル」と推定されようところだが、これは自衛隊用語ではよく「誘導弾」と呼ばれる装備である。したが…

イラーセクの風化

人間、意に反して何かをやらされたりすると、それに嫌悪感を抱くようになる。そこまでいかなくとも、飽きあきするようになる。──会社の仕事とか、学校の勉強とか、地域の活動とか、なんでもいい。それについて話題にするのはおろか、思い出したりもしたくな…

トマーシュ・ガリグ・マサリク

2月23日は天皇誕生日であった。代替わりによって12月から祝日が移動し、令和のあたらしい歳時記が始まったことになるが、かつて昭和年間には4月であった。さかのぼれば文明開化の世に、さらなる国民の統合に資すべしなどという思いつきからはじまったもので…

ヘイトの大陸

photo by Free-Photos BBCのサイトに掲載された記事によると、大陸ヨーロッパでは感染症にたいする恐怖が、中国人にたいする恐怖や嫌悪をあらためて浮かび上がらせている。日本人とて、欧州で団体観光客としての数的優位を誇っていた時代ならばいざ知らず、…

病に効くスープとは

身内が入院することになり、欧州と日本を往来する生活にはいった頃の話である。当時「手術後に咀嚼できぬ者が、栄養を摂って次の手術に備えなければならない」という難問が持ち上がった。何年も経ったいま現在でこそ、大手食品メイカーの多くが嚥下食と呼ば…

癲狂院のヨーゼフ2世

photo by urashima-e 承前。2020年2月20日は、1790年のヨーゼフ2世崩御からちょうど230年に当たっている。最期は肺病であったというから、だいぶ衰弱していたことだろう。耳ざわりのよいおべんちゃらでお茶を濁すことなく、「快復の見込みはない」と直言した…