ウラシマ・エフェクト

竜宮から帰って驚いたこと。雑感、雑想、雑記。

チェコ語

クリスマスには鯉(2)

クリスマスは、異教の冬至の祭りに由来する。ジェイムズ・フレイザーなどを読むと、そういうことが延々と論証されている。のち、それをキリスト教会が採り込んだものであると。 中部ヨーロッパにおいて、クリスマス・ディナーのさいに鯉をたべる慣らいがある…

胡瓜の季節

photo by Pavel Timanov ひとたび夏の天候が大暴れすると、甚大な被害をもたらすことがある。 チェコ共和国では6月24日、南モラヴィア県の南部に竜巻が発生した。同日の夜から全土で荒天に見舞われており、まいとし降雹の被害がでる季節ではあるものの、竜巻…

苗字の「男女差解消」がチェコ語を滅ぼす?

photo by Denis Vdovin 1) 身分証明書の仕様変更 2) チェコ語における女性の苗字 3) チェコ語学からの反発 4) 文法上の問題──例文による愚察 5) 女性は苗字を変えるか 6) 氏名は誰のものか 1) 身分証明書の仕様変更 チェコ共和国ではこのほど、身分証明カー…

イジー・メンツルによる架空の村

アカデミー賞監督、イジー・メンツルが亡くなった。享年82。数年前に、髄膜炎の手術がかなり大がかりだったと伝えられていたから、その後の容態が案じられてはいた。 1938年プラハ生まれ。1962年にアカデミーの映画学部"FAMU"を卒えると、やがてチェコスロヴ…

チェコ語におけるドイツ語からの借用語

さいきん、Kurzarbeitというドイツ語がスラヴ語圏のメディアにあらわれるようになった。直訳すれば「短い労働」ではあるが、コロナ禍の影響で、賃金労働者の勤務時間が短縮されて稼ぎが減った分を、雇用主が解雇しないことを条件に国が補填するような仕組み…

ハムスター三点盛り

photo by bierfritze 1) 捨てハムスター 2) ハムスター買い 3) ハムスター氏、the オンブズマン 1) 捨てハムスター イングランド北部・ダーリントンで、ゴールデン・ハムスターが18匹、ロボロフスキー・ハムスターが2匹、散歩中の犬によって発見された。3月3…

灰の水曜日とコロナ禍

ことしは2月26日が「灰の水曜日」であった。イースターから46日前の水曜日を指している。ブラジルなどをのぞけば、公休日になっている国はあまりないが、カルネヴァルの終わりも意味するなど、文化的にはなかなか大きな節目ではある。 ふるくは灰をかぶる習…

コンビニ考

photo by Duy Nguyen コンビニ大手・セブン&アイHDが、米石油精製会社マラソン・ペトロリアムとM&Aの交渉をしているという報道があった。何のことかと思ったけれど、ガソリンスタンド事業の買収というから合点がいった。 今は昔、20世紀の終わりの頃、ドイツ…

ヴァーツラフ・ハヴェル小路

ヴァーツラフ・ハヴェル『力なき者たちの力』が、NHKの『100分de名著』に取り上げられ、第一回目が2020年2月3日に放送された。視聴率もなかなかよかったという噂で、意外にも日本人のハヴェルにたいする関心は高いものとみえる。2011年12月に逝去した直前に…

オッカムの剃刀 と"částice"

photo by Thomas Breher 先ごろ、英独の研究者らが、複数の原子が結合して分子になる様子を撮影することに成功した旨の報道があった。カーボンナノチューブに閉じ込めて運動を抑制した金属原子を、透過型電子顕微鏡という特殊な顕微鏡を用いることで、18秒に…

チェコ語はむずかしい言語か

photo by Wojtek Witkowski チェコ語はむずかしいのか──とあらためて訊かれてみると、応えに窮した。もし、B1レヴェルの試験に受かるには学習時間がどれだけ要るのか、というような具体的な問いであったらば、なんらかの数字を示すことができよう。だが、「…

KOH-I-NOORの鉛筆とヴェルサティルカ

"Versatilky", KOH-I-NOOR 共産主義とは名ばかりの中国に尻尾を振っていた欧州企業も、このところの米中経済戦争激化のあおりもあって、かの地の景気が減衰するなか、戦略の見直しをせまられている。なかでもオーストリア航空が、中国路線に機材を振り向ける…

狡兎死してクルド烹らる──中欧ファストフード事情から

Photo by Nathalie Dulex ケバブ。いまや日本でもお馴染みになった、あのドネル・ケバブである── 大戦後の西ドイツでは、労働力不足からトルコ人移民が歓迎された。結果、ケバブといえば、カリーヴルストやポムス・ロート・ヴァイスなどのB級グルメとならぶ…

カレル・ゴット逝去。Gott ist tot...

10月1日の夜遅く、チェコ共和国の国民的歌手、カレル・ゴット(Karel Gott)が亡くなった。80歳だった。2016年から急性白血病を患っており、2019年9月に闘病を公表したばかりだった。 現代チェコ語会話で、人名「カレル Karel」にたいする定型の愛称たる「カ…

レイモンドと井上の群馬音楽センター

数年前の秋、西ボヘミアはプルゼニュを訪れたとき、駅前のバス停に突として現れたのは、《高崎白衣大観音》であった。──それは日本の文化に焦点をあてた交流行事を知らせるポスターであったが、プルゼニュ市にとって日本といえばまず、いわゆる姉妹都市協定…

ボヘミヤの伍長?

ボヘミアの伍長──というのは、ときのドイツ国大統領パウル・フォン・ヒンデンブルクが、アードルフ・ヒトラーをさしていった表現だという。久しく人口に膾炙した謂いであるものの、ヒトラーは伍長でもなければ、ボヘミア生まれでもなかった。 こういった場合…

コクヨの独善とぺんてるの憤慨

ヴィエトナムで自動二輪車全般が「ホンダ」と呼ばれることは、よく知られている。ほかのメイカーをさしおいて、ホンダの製品がひろく親しまれてきた証左といえる。 チェコ語の口語表現には、"pentelka(ペンテルカ)"という語があって、ぺんてるの製品ないし…

だめだコリャ。

チェコ語で「ズムルズレー・ラメノzmrzlé rameno」。ドイツ語では、英語からの借用で「フロウズン・ショールダーFrozen Shoulder」という。つまり、ヨーロッパ諸語ではたいてい「凍った肩」という謂いをするようだが、要は、日本語でいう五十肩、あるいは四…

よんどころなき事情にうってつけの日

夏至は過ぎたとはいえ、日はながい。 アルプス以北のヨーロッパは、じつに北海道の北端より緯度が高く、廃止予定のサマータイムもことしはまだ健在だから、夜9時を過ぎてもなお明るい。──そこで10時まで開いているはずの、フィットネス・ジムに向かったわけ…

令和前夜のチェコスロヴァキア

チェコ共和国にいて、地方の飲み屋で令和を迎えることになった。明くる5月1日はメーデーの祝日である。 平成が最後の数分をむかえるころ──といっても、むろん日本時間ではない。日本ではとっくに令和になっていて、宮内庁職員がおそらく徹夜で準備した儀式が…