ウラシマ・エフェクト

竜宮から帰って驚いたこと。雑感、雑想、雑記。

狡兎死してクルド烹らる──中欧ファストフード事情から

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Photo by Nathalie Dulex

 ケバブ。いまや日本でもお馴染みになった、あのドネル・ケバブである──

 大戦後の西ドイツでは、労働力不足からトルコ人移民が歓迎された。結果、ケバブといえば、カリーヴルストやポムス・ロート・ヴァイスなどのB級グルメとならぶ「ドイツ名物」となって、すでに久しい。

 いっぽう、戦後まもなく共産化したチェコスロヴァキアでは、モラヴィアを中心に、ギリシア内戦を逃れた共産党系のギリシア人難民が住まった。それもあってか、チェコ語ではケバブに似たファストフードは、ギリシア風に「ギロス」と呼ばれることが、つい最近まではわりと一般的であった。

 その後も、繰り返される紛争や和平のたびに、多様な難民や出稼ぎ組がやってきた。そのためかしらん、昨今のチェコ語の会話では、むしろ「ギロス」ではなく「ケバブ」と呼ばれることが多くなってきているようにおもわれる。

 1990年代に数のうえでピークをみたヴィエトナム系の移民は、まだ「ギロス」と称して、我流のジャンク・フードを売っていたものだが、やがてコソヴォアルバニア人など、バルカン勢がやってきて「ケバブ」を焼くようになり、イラク戦争やシリア内戦以降は、イラク人やクルド人ケバブ店がみられるようになっている。他方で、ギリシア式の本格「ギロス」を出す店も現れた。それだけケバブ・ショップも多様化しているのだ。競争もあり、かつてのヴィエトナム人の模造品にくらぶれば、風味や品質は飛躍的に向上したが、もとはと言えば、それにはバルカンや中東の情勢が影響をおよぼしていた、ともいえよう。

 

 先日、米トランプ政権が「不関与」を発表したことは、トルコにとっては軍事作戦へのゴー・サインとなった。かつてアメリカは、「不介入」宣言を出して、イスラエル中東戦争へのゴー・サインを出したことがあるが、これも同様の「介入」である。その後、国連安保理の枠組みで形ばかりの非難を表明し、シリア領内に侵攻したトルコを牽制するポーズをとったとはいえ──IS討伐に協力してきたクルド人は良い面の皮である。

 2014年「建国」を宣言したISが急激に勢力を増し、発生した難民は、ヨーロッパにとって巨大なアポリアとなった。英国のEU離脱問題にもつながっているが、現在もさまざまな影を落としている。

 すでに民間人にも犠牲者が出ており、ISの戦闘員が収容されていたキャンプから逃亡したとも報道されている。テロリズムや難民といった問題が再燃する恐れもある。

 

*参考:

www.bbc.com

www.bbc.com

 

カリーヴルストWikimedia):

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/1/1c/Currywurst_pommes_vw_autostadt_cylinder.jpg

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  • メディア: ホーム&キッチン