ウラシマ・エフェクト

竜宮城から帰って驚いたこと。雑感、雑想、雑記。日欧ブログ……?

モラヴィアびと

photo by Jindra Buzek 日本人なのか、それともアメリカ人なのかなどと、人間はとかく他者にレッテルを貼りたがる── 大坂なおみの手記を読んでふと思い出したのは、個人的なモラヴィアとの因縁である。具体的には、四半世紀も前に読んだ同様の主旨のフレーズ…

2001年の長月

photo by Steve Harvey ニューヨーク同時多発テロ事件から19年が経った。来年は20周年。911とか、セプテンバー・イレヴンとも呼ばれたものだ。リメンバー・パールハーバーのノリでもあったのであろう。さいきんターリバーンとの和平が成立し、米軍はようやく…

イジー・メンツルによる架空の村

アカデミー賞監督、イジー・メンツルが亡くなった。享年82。数年前に、髄膜炎の手術がかなり大がかりだったと伝えられていたから、その後の容態が案じられてはいた。 1938年プラハ生まれ。1962年にアカデミーの映画学部"FAMU"を卒えると、やがてチェコスロヴ…

ベルリーナー

photo by Leon Ephraïm かねてからの告知どおり、チェコ共和国のミロシュ・ヴィストルチル上院議長が台北を訪問した。日本語メディアでもさかんに報じられている。国内でもゼマン大統領は反対、バビシュ首相は沈黙──と決して一枚岩ではない小国にも拘わらず…

葉月つごもり

L'Apparition 8月も終わりで、気がつけばもう9月なのである。当たり前だが。早い。 8月29日は「洗礼者ヨハネの殉教日」であった。事件じたいは「刎首」とも呼ばれるが、正教では「斬首祭」という謂いをするらしい。要は首を刎ねられたのであるが、それを祭っ…

大衆の反逆

photo by Anne Nygård 安倍晋三内閣総理大臣が辞任の意向を表明した。このタイミングでの続投断念は、当人がいちばん無念であったろう。ストレスが大敵の難病が持病とあっては、時間の問題であったのかもしれないが。報道によると、感染症対策が世論の評価…

終わらざる晩夏

photo by Mitchell Bowser 雨安居、うあんご──とは辞書によれば、僧が寺に籠もっておこなう雨季の修行で、夏安居、夏行、夏籠り、夏断とも呼ぶ。陰暦4月16日から90日間ともいう。感染防止の自粛要請とは関係もなく、そもそもこの時節は雨天がつづいたり、は…

プルゼニュのパットン記念館

photo by Ye R プルゼニュ市の〈パットン記念館〉を訪ねたのは、もう何年も前である。2005年に複合施設「ペクロ(地獄)」内に開設された資料展示館であった。ことし6月の報道によると、その古びた「地獄」とは仮の住まいであった由で、もとより本来の物件の…

マター=オヴ=ファクト

photo by Carina Chen 夏のある日。翌日にはダブリンを発つ予定だった。ファーストフードの昼食を終えようというとき、にこにこしながらそいつはやってきた。──チャイニーズかい、とはまたご挨拶だ。そう訊かれると、心外だな、と感ずるのがわれら日本人の心…

アメリカの王子

photo by Benjamin Rascoe あの夏、プロヴァンスを訪れる前、アメリカ合衆国にいた。 シカゴ・オヘアー空港に着いたとたん、日本やヨーロッパとの違いに戸惑った。アメリカは「でかい国である」とか「自助努力の国である」と俗に言うのは知ってはいても、現…

恐怖の大王

photo by Diederik Smit 南欧の夏は、日本ほどの降水量はない。したがって湿度が低いから、日中は鎧戸を閉め切っておけば室内温度の上昇をふせぐことができ、家屋内は暗いがすごしやすい。気候変動の影響で常識も変わりつつあるが、あの夏はまだそういう事情…

アードルフ・ロース生誕150周年

当世の流行りとはいえ、銅像を打ち倒す運動には賛同しかねる。偉大な篤志家であったが奴隷も所有していた──ということになると、ヴァンダリズムの対象になるらしい。だが、200年も300年も遡及して往時の常識を今日の価値観で断罪することに、妥当性は微塵も…

オリンパスE-P1

「オリンパス、カメラ事業を売却へ」の報に接した。たまたま、イタリア語の文法をやさしく解説してくれている本を読んでいて、最初の例文が「ローマは永遠なり」を意味する《Roma è eterna.》だった。だが、永遠につづくものなどないのだ。 思いかえしてみる…

3日でおぼえるアラビア語

photo by Tamarcus Brown 俄雨に降られた。もう夏である。夏といえば選挙……というわけでもないが、参議院選挙を連想してしまう。けれど目下の話題は、7月に投開票を控える東京都知事選挙だ。そして選挙がちかづくと、いまやウェブにもゴシップとも誹謗ともつ…

チェコ軍の次期装輪式自走砲〈CAESAR〉

ことし令和2年度の富士総合火力演習は、疫禍の時世から招待客なしでとり行われ、かわりに5月23日、YouTubeでライヴ映像配信が実施された。そこには昨年につづいて、最新鋭〈19式装輪自走155mmりゅう弾砲〉の姿があった。国土の道路網の整備がすすんだ結果、…

王の道行き

気がつけばもう6月で、呆然とする。そんな向きも多いのではないか。季節のうつりかわりを感じさせる折々の催しなど、今年はことごとく延期や中止となった。──東京五輪の延期決定は3月24日だったが、ほか大陸欧州でもロックダウンのさなかにあって、4月21日の…

〈Playgrounds〉 で遊んでみた

APP

アップル社の〈Swift Playgrounds〉については、2014年のリリース以来いろいろと聞いてはいたけれど、今年の2月にmacOS向けのスタンドアローン版、つまり単体で利用できるアプリが出来した。これで自分のような情弱系ユーザーでも、気軽に体験できるようにな…

20式小銃と宇宙作戦隊

photo by Kelan Chad まず、日本語を学習する際の、あるいは教育する際の話である。「2」と「5」という数については、ほんらい「ニ」および「ゴ」ではあるものの、電話番号などを言う場合などは慣例的にそれぞれ「ニー」「ゴー」と発音されることが多い──と…

キル・レイショウ

photo by Lukas Rodriguez ロバート・マクナマラといえば、10年ほどまえに没した伝説の経営者であって、統計学をもちいた科学的経営を政治に応用して成果をあげた。それでフォード社のリストラを成功させたのを讃えられたいっぽう、合衆国国防長官としてヴィ…

伯林から

photo by Artem Sapegin 大陸ヨーロッパでは、感染症対策の各種行動制限が緩和に向かいつつあり、そんな各地の動向を報じるメディアも多い。 NHKのニュースでは5月12日、ベルリーン在住の多和田葉子とのインタヴューが放映された。いまや全米図書賞受賞作『…

馬鈴薯の味わい

photo by Rita E 新じゃがのおいしい季節である。 ここ数年のお気に入りは、青椒土豆絲(チンジャオトゥードウスー)。細く切った薯をしばらく水に晒しておくのは、不可欠の工程である。たっぷりの豚脂か鶏油で炒めて、唐辛子と鶏がらスープの素をもちいるの…

ポストコロナ・フューチャー?

photo by Chang Su NHKのニュースに、イアン・ブレマーが出てきてインタヴューにこたえていた。いろいろの予言めいた著作で知られるが、コロナ禍終息後の世界については「3年後にEUが存続しているかどうかさえわからない」などと率直に述べた。 未来について…

雨さえ降れば

photo by Oscar Keys このところ、大陸欧州に雨が降らない。防疫にも欠かせない水資源が心許ない。なんでも、停滞ぎみのふたつの低気圧によって北方に高気圧が膠着し、あたかもヨーロッパの天気図上にギリシア語の「Ω」の字が描かれたような「オメガ状況」を…

「トロッコ問題」における大阪モデル

photo by Marina Pershina 窓を開け放てば、初夏の日差しを感ずるのもふしぎはない。すでに5月なのである。 ドイツ語圏の報道記事に「lockern」という語が出てくるようになって久しい。コロナ対策の各種規制を「緩和する」という話題にほかならない。数字を…

人民の阿片

photo by Monica Volpin 新たな感染者の伸びをチャートで毎日追っている向きも多いだろう。ここにきて国によっては、当面の医療崩壊が避けられそうな気配が見えてきた。日本でも緊急事態宣言をいったん終了させることも可能であろうと、種々の分野の研究者が…

抗体検査とガタカな未来

まっさらな新型のウイルスには、真の専門家が存在しない。日々あらたな経験知を蓄積しつつある、というのが世界の現状だろう。それでも、この数か月にわたる闘争から得られた人類の知見というのがあって、それを簡潔にまとめた記事というのが、このほど『ニ…

モラヴィアのワイン酒場 (2)

photo by LEEROY 承前。中高年は昔話ばかりするからきらわれるのだ──といわれても、書くねたに窮すれば致し方ない。だが、個人的には年寄りの話もさほど苦痛に感じないたちだから、聴くのを厭うひとの気持ちはよくわからない。内容にもよるか。いずれにせよ…

モラヴィアのワイン酒場 (1)

photo by Jindra Jindrich くだものの果汁は、それじたい単糖類を含んでいるから、抛っておけばアルコール発酵がすすんでしまう。それが、おなじ醸造酒といってもビールや日本酒とは異なる点で、そういう意味でワインというのは、もっとも原始的な酒に属して…

国境の復活

photo by Artur D 「緊急事態宣言が全国に拡大へ」の見出しが一斉に出来した。4月16日夜には、官報の号外が貼り出された。 7日に7都府県に同宣言が発出されてから、10日も経っていない。この先行した発出について、北海道知事や奈良県知事などからは「移動制…

インフォデミックとその境界(2)

photo by Nicky Pe 4月11日の〈NHKスペシャル〉は、厚生労働省のコロナ対策の中枢に密着取材したものであった。ばらばらで、ときにちぐはぐな種々の報道のあいだにあった情報の空白部、ジグソーパズルでいえば苛立たしくも欠けていた最後の1ピースを埋めるよ…