ウラシマ・エフェクト

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チェコ共和国軍、F-35導入へ

photo by MICHELLE HN

 チェコ共和国政府は、第五世代戦闘機・F-35導入の方針を決定した。

 ペトル・フィアラ首相とヤナ・チェルノホヴァー国防大臣が、先日就任したばかりの参謀総長・カレル・ジェフカ少将をともなって、7月20日閣議後の会見で発表した。

 同時に、予定されていた次期歩兵戦闘車の入札を中止することも決定され、CV-90を製造するBAEシステムズに通知するとした。

 チェコ共和国軍(AČR)は現在、戦闘機としてサーブJAS_39C/Dグリペンを計14機、運用しているが、リース契約は2027年までで、その後の2年間はオプションとされている。国防省はこの後継としてF-35を選定し、24機の購入を希望している。これは、20年ほどまえにグリペン導入時に計画されていた当初の数であったものの、のち調達機数には「妥協」が生じた。が、目下の妥協をゆるさざる状況のために、市場で最良の機材を最適な数そろえる由、同国防相は述べた。つまり、ロシアのウクライナ侵攻を受けた措置であるという了解事項を示唆したわけだ。

 契約が決まれば、金額は数百億コルナにのぼるとみられており、軍の装備としては同国史上最大の「買い物」となる見通し。とはいえ、アメリカとの交渉はまだこれからであり、2023年10月までに合意に至らない場合は、他の選択肢もあり得るとしている。

 というのも、さいきんプラハ駐箚スウェーデン大使が、AČRにたいしてグリペンの最新鋭・E型の売却と引き換えに、現在リース中の機材の無償譲渡およびアップグレードを提案する意向を表明していたというのだった。これにチェコ側は、正式なオファーはまだ受けていないとしているが、万が一、F-35の導入ができない場合の「プランB」として織り込んでいるのだろう。

 ウクライナの一件で、たとえばドイツなども先日F-35の導入に舵を切ったばかりだが、北大西洋条約機構NATO)内で採用・運用する国が増えれば、友軍機どうしで情報を共有しつつ交戦できる同機の能力のメリットは増大することになる。チェルノホヴァー大臣も、将来的には全欧で数百機のF-35が運用される可能性があるとみている。

 メリットと同時に運用コストの増大も、しぜん予想されている。とはいえ、装軌式歩兵戦闘車の入札中止は、まったく別の問題であるようだ。

 国防相によれば、入札の中止は、法務局の勧告にしたがったものだという。供給元の候補となる3社とのやりとりは、当初のスケジュールに数年の遅延がでていた。前のバビシュ政権は、オファーが軍の要求を満たしていないとしてプロセスを中断していたが、現フィアラ政権下で国防省がこの6月末に、入札参加企業にあらたな条件を提示したところであった。スペインのGDELS社(ASCODを提案)とドイツのラインメタル・ランドシステム社(同リンクス)は、この条件に同意しなかったのだという。

 すべてを透明にするわけにいかぬ防衛装備品の契約については、とくにこの国のばあい、つねに汚職の影がつきまとう。前の左派ポピュリスト政権は、欧州連合EU)の立場などからすると、ともすれば「クレプトクラシー」の疑いも濃厚な政府であって、なおさらであった。チェルノホヴァー国防相によれば、ある入札参加企業が条件を満たしておらず、排除すべきだったとしていた一方、ルボミール・メトナル前国防相は、専門家グループにしたがって、このまま推進すべきと主張していた──といった具合で揉めていた。もともと4社の参加があった選定プロセスからは、プーマを提案していたドイツのコンソーシアム・PSMが、すでに撤退している。「排除」されるべきだったというのは、同社を指していたことが暗示されているのだ。

 とはいえ、2026年までに整備するとNATOに約している「重旅団」には、基幹となる装軌式の歩兵戦闘車が不可欠とされる。そのため、来年の予算にはかならず反映されると国防相は請け負った。

 折からの資材価格の高騰にくわえて、世界じゅうの軍需産業に注文が殺到している。装備の調達がむずかしい季節がやってきている。チェルノホヴァー大臣はこれを「できるだけ早く行列に並ばなくては」と表現している。

チェルノホヴァー国防大臣(左)とフィアラ首相(右)──会見にて(ČT)

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