ウラシマ・エフェクト

竜宮から帰って驚いたこと。雑感、雑想、雑記。

映画

シンデレラたちと成長の神話

photo by Alain Audet 2019年末に目を瞑って、ふたたび目を開けたら、2022年元旦だった──というインターネット・ミームがある。まさにそれ。ここ2年間の記憶が、なんだか曖昧な感じだ。 それだから、おおくのひとが節目を実感できる行事や娯楽を欲したのでは…

アロイス・ラシーン(2)──暗殺者・ショウパルの謎

「FN・ベイビー・ブラウニング」というのは、.25ACP弾を使用する小型拳銃である。 ブラウニングといっても、サライェヴォで帝位継承者フランツ・フェルディナントを屠って世界大戦への道をひらいた「M1910」でもなければ、諸国の軍隊で採用されるほど火力に…

アロイス・ラシーン(1)──『滅亡した帝国』

アロイス・ラシーンの名は、経済学に明るい向きなら、あるいはご記憶のことだろう。来たる10月18日は、生誕154周年という計算になる。 ラシーンは、第一次大戦時のボヘミアにおいて、カレル・クラマーシュらとともに、反ハプスブルク「抵抗運動」を指導した…

メタノール──モラヴィアの暗い影

photo by Migawka 2012年の「メタノール事件」とは、その名にあるメタノールが混入されたアルコール飲料によって引き起こされた惨劇であった。チェコスロヴァキアが民主化されて以降、もっとも多くの被害者と被疑者を記録した、チェコ共和国史上最大の刑事事…

アウトポスト──米国流の荒事

財貨と航空戦力にものを言わせ、アメリカがいかにでたらめな戦争をやっていたか、よくわかる。 ロッド・ルーリー監督の映画『アウトポスト』は、端的にいえば、そういう劇映画である。そのあたりは、ドキュメンタリーよりよっぽどわかりやすく焦点が整理、調…

ヒルスネル事件(2)──衆愚の世界

反ユダヤ政治の季節 儀式殺人の迷信 アウジェドニーチェクのその後 『無実の男』と現在 反ユダヤ政治の季節 (承前)ポルナーは、がんらいボヘミア王国の町で、モラヴィアとの辺境に位置している。現行の、チェコ共和国の行政区画ではヴィソチナ県に属す。事…

ヒルスネル事件(1)──衆愚の法廷

9月12日、悪名高いヒルスネル事件の公判がはじまった。ただし、1899年の9月12日であるから、122年前のことである。 2016年には、この事件をチェコ共和国の公共放送(ČT)がドラマ作品として映像化した。Amazonで視聴できる。前後半の2部構成で、各話50円とな…

『アルゴ』──威信の失墜

photo by Mohammad Shahhosseini 大山鳴動して、邦人たった1名を救出……みたいに貶した野党議員もあったけれども、のちアフガン市民の移送にも自衛隊は成功していたことが伝えられた。カーブル脱出作戦である。 しかし、7月はじめの米軍のバグラム空軍基地撤…

ミッドウェイを抱きしめて

もうすぐ記念日だからというわけではないけれど、ようやく最近になって、ローランド・エメリヒの映画『ミッドウェイ』(2019)を観た。監督がシュトゥットガルトの出身だからか、ドイツ語圏のメディアにも一時期、さかんにインタヴューがでていたが、もうだ…

13時間

photo by Ahmed Almakhzanji アメリカ合衆国に関しては、ショッキングなニュースに触れたのち、何年も経ってから映画で事件の真相を垣間見ることはよくある。 ソマリアの一件がそうだった。たしかに特殊部隊・デルタの隊員の死骸がなぶられる映像は衝撃的だ…

デインジャー・クロウス──豪州の戦争映画

たまに戦争映画が観たくなる。 それも、戦争を背景としたコメディや恋愛ドラマではなくて、ちゃんとしたハードコアのドンパチがあるもの。いや、ドンパチだけのものがいい。 あらすじはお定まりで、戦場の平和な日常にいた部隊がある日とつぜん窮地に陥って…

イジー・メンツルによる架空の村

アカデミー賞監督、イジー・メンツルが亡くなった。享年82。数年前に、髄膜炎の手術がかなり大がかりだったと伝えられていたから、その後の容態が案じられてはいた。 1938年プラハ生まれ。1962年にアカデミーの映画学部"FAMU"を卒えると、やがてチェコスロヴ…

カレル・チャペクとフゴ・ハースの『白い病』

感染予防のため、集会をとりやめ、人びとにお互いの距離を保つようにと、ときには政府首脳までもが直に呼びかけるなか、馬耳東風のていで遊び歩くひともいる。ドイツでは「コローナパーティ」なる語もできたそうだ。そういえば、若年層は罹りにくく、高齢者…

ファイナル・カウントダウン

名優カーク・ダグラスが亡くなった。享年103という大往生であった。それをインスタグラムで発表したのは、実子のマイケル・ダグラス、御年75。 映画じたい、芸術としても米国の産業としても歴史的にはすでに斜陽といわれるのかもしれないが、あるいはそれだ…

世界でもっともうつくしい女

100を超える博物館施設があるというウィーンに、日本からやってくるひとは多いが、ユダヤ博物館をふらり訪れる者は、むしろ稀だろう。けれども、ウィーン市立博物館で町の歴史を概観したあとなどにゆくと、意外な発見があって、ユダヤの艱難の道のりを知る以…

スカイ・ハイ──香港から来た男

photo by Florian Wehde 2019年の春から初夏にかけて、逃亡犯引き渡し条例の改正をめぐり、百万人単位の参加者を擁する抗議活動が断続的につづくようになった。特別区行政長官・林鄭月娥の失脚は免れまい。選挙で選ばれながらも、民主主義を崩壊に導いている…

日本のいちばん長い日々

先日、日本映画フリークに遭遇した際、つきあってピヴォを呷りながら、酔った頭でいろいろ考えた。 昨今の日本映画の低水準ぶり(少なくとも欧州ではそういう評価になっている)を鑑みるに、「他人様にお奨めできる日本映画ってなんだろうか」と、あらためて…

タンポポ──欧州、ラーメン、日本人

photo by masaaki komori 日本人だろ、日本人なら、ちょっと相手してやってくれよ──といわれて、ピヴォ(麦酒)を飲りながら、日本映画フリークとの歓談につきあった。紹介された人物は、すでに10杯ちかく呑んでいたらしい。スロヴェニア出身だという同僚の…

"ブレグホウク"?──チェコ軍次期汎用ヘリ機種選定の行方

photo by urashima-e 2019年末までに、Mi-24/35の後継として12機の双発汎用ヘリを取得する旨、チェコ共和国の国防省が発表した──とニュースにあったのは、数か月まえのことだった。 ところが、発表は曖昧すぎた。このMi-24、あるいはその後期輸出型のMi-35は…

ゴンゾウさん【麦酒】

GONZO Imperial Porter, Flying Dog 店の入り口には、飲み友達の死亡を伝えるA4版の紙が貼られている。音響監督として四半世紀にわたって勤務していた、となりの劇場に掲示されていたものだったのだろう。はやいもので、ことしの3月6日で2年になる。 春の兆…

ブルーノ・ガンツ、逝去。ちきしょーめー

ブルーノ・ガンツ氏が亡くなった。享年77。大腸癌であった。 www.swissinfo.ch 数々の名作に出演してきたが、ブルーノ・ガンツといえば、ヴィム・ヴェンダース監督の『ベルリン・天使の詩』(Der Himmel über Berlin, 1987)で、自身の存在を世に知らしめた…