ウラシマ・エフェクト

竜宮から帰って驚いたこと。雑感、雑想、雑記。

悪疫の名前

photo by Hans Braxmeier 『薔薇の名前』といえば、記号論の研究者であったウンベルト・エーコの小説で、1980年代の映画もたいへんな名作であった。近年ではTVシリーズ版も制作されている。むかし中世史担当の教員が副教材に採り入れていたのも、然もありな…

かぶれとシャンプー

カフェイン入りというドイツ製のシャンプーが、「育毛に」と大陸ではけっこう人気らしい。欧州は「薄毛先進地帯」のはずなのに、ヨーロッパ人はどうもちょろいなと感じる。というのも、育毛や養毛といった「毛生えシャンプー」市場が成熟している日本の消費…

ヴァーツラフ・ハヴェル小路

ヴァーツラフ・ハヴェル『力なき者たちの力』が、NHKの『100分de名著』に取り上げられ、第一回目が2020年2月3日に放送された。視聴率もなかなかよかったという噂で、意外にも日本人のハヴェルにたいする関心は高いものとみえる。2011年12月に逝去した直前に…

チェコ最古の醸造所?

photo by urashima-e チェコ語にいう「klub」とは、便宜上「クラブ」と訳してしまうが、それで語感まで伝わるとはいいがたい。強いていえば、結社の自由というときの結社であり、ジャコバン・クラブとか、会員制社交クラブというときのクラブでもあって、一…

寒暖差とお天気アプリ

APP

気がつけば春節も過ぎ、節分がせまっている。もうすぐ春である。小春日和には、雪のとけた地面がぬかるみ、そうすると、はやくもイースターでも来たかのような風情が漂う。けれども油断は禁物で、すぐにまた寒気がやってきて、路面はもとの白色に覆われたり…

オッカムの剃刀 と"částice"

photo by Thomas Breher 先ごろ、英独の研究者らが、複数の原子が結合して分子になる様子を撮影することに成功した旨の報道があった。カーボンナノチューブに閉じ込めて運動を抑制した金属原子を、透過型電子顕微鏡という特殊な顕微鏡を用いることで、18秒に…

ペスト柱

オロモウツの「この上なく神聖なる三位一体の柱」(Wikimedia) 新型肺炎ともコロナウイルス感染症とも通称される疫病が猛威をふるっている。中国ではすでに百人を超える死者が出ているという。日本はおろか、先日ついにウィーンにも上陸したという報道があ…

MacBookの水死。

Mac

photo by Andrian Valeanu 水没というとさすがに誇張が過ぎるが、水でMacBook Proを壊してしまった。気をつけてはいたのだけれども、アウェイの環境では自分なりの「安全管理」のルーティーンを守りきることができず、やってしまった。 これが水分を拭き取っ…

レバノン、イラク、横浜──令和2年の世界

photo by Raimund Andree 新年早々、メディア産業は繁忙をきわめている。 カルロス・ゴーン亡命の続報によって、同事件の当事者らによる国際的な広報合戦の火蓋がきっておとされた。ところで、スペイン・セアト社のトップたるルーカ・デ・メーオがその職を辞…

チェコ語はむずかしい言語か

photo by Wojtek Witkowski チェコ語はむずかしいのか──とあらためて訊かれてみると、応えに窮した。もし、B1レヴェルの試験に受かるには学習時間がどれだけ要るのか、というような具体的な問いであったらば、なんらかの数字を示すことができよう。だが、「…

日本語論文における「一人称代名詞」

photo by Tomasz Paciorek ぐうぜん見つけて、なんとなく読んでしまった、明治期の日本語に関する調査の論文である:「明治初期論説文における一人称代名詞の分析 」 「人称変化」のない日本語に「人称代名詞」などあるわけがない──という説のもっとも著名な…

山下埠頭のカジノ・ロワイヤル

photo by Mario Takahashi Vesper Lynd: I'm the money.James Bond: Every penny of it. 映画『カジノ・ロワイヤル』のタイトルには「バトル・ロイヤル」の含意もあるのだろう。各国の諜報員らが卓を囲んでカードで、また場外でも身体を張って闘うのだ。同作…

クリスマスには鯉

photo by Jiří Fröhlich 鯉をクリスマス・イヴの食卓に供する習慣は、戦間期に一般に普及した、というのが通説らしい。現在までその文化の広がる領域は、かつての大ドイツ主義を偲ばせる。すなわち現在のドイツ、オーストリア、チェコ、ポーランド、ハン…

チェコ軍の次期汎用・攻撃ヘリコプター「システムH-1」とは

Twitterより チェコ共和国のルボミール・メトナル国防相は12月12日、米国防総省にて、ヘリコプターの購入契約に署名した。ヘリコプター12機に加えて、兵装システム、弾薬、人員のトレーニングが含まれる。チェコの公共放送の報道によると、146億コルナ(約69…

オストラヴァにおける拳銃乱射事件

チェコ共和国第三の都市、オストラヴァで12月10日の朝7時すぎ、銃の乱射事件が発生した。現場となったのは日本でいうところの大学病院で、6人が死亡、3人が負傷した。被疑者の男も、のちに自ら頭を撃って死亡した。 警察が最初の通報を受けたのは7時19分。施…

チャトウィンのノート

photo by Viktor Hanacek 半年ほど前のことだろうか。愛知県春日井市の羽衣文具がチョーク事業を畳んだがために、米国の数学者たちがパニックに陥った、という動画によるレポートがあった。黒板に板書するための、あのチョークである。たかがチョークといえ…

ビールの資格3選──アドバイザー、ソムリエ、テイスター

photo by Petra Solajova ビールに関わる認定資格について、3種類をとりあげてみた。ほかにもあるかもしれないが、独断と偏見にもとづく選択であり、比較であり、評価であることをお断りしておきたい。 ──その3つとは、ビアアドバイザー、ビアソムリエ、ビ…

ガンブリヌスとは誰だったのか。

ガンブリヌスといえば、ビールの王として名高い。鷗外森林太郎などは「麦酒神」と、その存在をまさに神格化してしまってすらいる。 南独逸の半ば以上を占め、ガンブリヌス(麦酒神)の恵みを受ける豊饒な国に九百三十万の民草を統治するバイエルン国王──十一…

ミラン・クンデラ──世評の耐えがたき軽さ

ミラン・クンデラに、剥奪された市民権がふたたび授与された、と報じられている。日本語では、国籍といったほうが通りが良いかもしれない。 チェコスロヴァキア最後の大物亡命作家は、同国ブルノ出身ながら、1970年代に亡命して以来、フランス在住である。日…

世界でもっともうつくしい女

100を超える博物館施設があるというウィーンに、日本からやってくるひとは多いが、ユダヤ博物館をふらり訪れる者は、むしろ稀だろう。けれども、ウィーン市立博物館で町の歴史を概観したあとなどにゆくと、意外な発見があって、ユダヤの艱難の道のりを知る以…

ザップ・ガンと教皇フランチェスコ

読書が好きな子どもだった。 けれども、どうしてフィリップ・K・ディックの『ザップ・ガン』を書店で手にとったのか、我ながらわからない。「創元SF文庫、待望の新刊」として、目立つ位置に陳列されていたのかもしれない。 兵器ファッション・デザイナー、ラ…

ミロスラフ・ティルシュの像

プラハの日本大使館に用事があって、なにも考えずに朝がた地方から出てゆくと、よりによって到着する時間帯が領事部の昼休みにあたっている──ということがよくあった。 そうなると、小規模な博物館やランチ営業で混み合う飲食店を除けば、時間をつぶす施設な…

ビロード革命30周年とマルチン・シュミートの謎

Photo by Kevin Maillefer 11月17日は「自由と民主政治をもとめた闘争の日」として、チェコ共和国の祝日となっている。ボヘミアとモラヴィアを保護領化したナツィのドイツ当局が、1939年にプラハの大学を閉鎖した日であり、また1989年の、世に言う「ビロード…

さっとくぐらすビスコフ

オペラ歌手にして名優、クラウス・オフチャレクが演じた風変わりな男は、重要参考人として事情聴取のためにウィーンの警察署にやってきた。そこで、刑事がまさに手をつけようとしていた三日月型のパン、キプフェールを勝手にたべてしまう。その際、キプフェ…

聖マルティヌスの日

明日は鴨たべるのか──と、時候の挨拶のつもりで訊いたが、ばかな間違いをしでかしたことに気づかなかった。 質問された友人は、なんのことかとしばらく思案したのち、「カモ(kachna)じゃなくて、ガチョウ(husa)だろ」といった。大笑いした。寒くなってき…

四半世紀とか30年とかのオスタルギー

令和元年11月10日、東京では、ひと月ほど延期されていた祝賀御列の儀が行われ、沿道にたくさんの人がつめかけたと報じられている。この光景は、1993年6月の御成婚のパレード以来であると伝えるメディアもあった。じつに四半世紀以上が経過している。 それに…

二日酔いの特効薬? 常備したいもの

馬鹿につける薬と二日酔いの特効薬は無い、という。ただ後者に関しては、Newsweek誌の記事によると、もうすぐ出来するかも知れない(二日酔いの特効薬がもうすぐできる? 酔ったマウスに効果 | ニューズウィーク日本版)。 いずれにしても、忘れた頃にやって…

KOH-I-NOORの鉛筆とヴェルサティルカ

"Versatilky", KOH-I-NOOR 共産主義とは名ばかりの中国に尻尾を振っていた欧州企業も、このところの米中経済戦争激化のあおりもあって、かの地の景気が減衰するなか、戦略の見直しをせまられている。なかでもオーストリア航空が、中国路線に機材を振り向ける…

皇帝のいない日本?

まいとし9月28日は、チェコ共和国の祝日である。935年に、ボヘミアおよびモラヴィアの守護聖人たる聖ヴァーツラフが殺害された日付けが、ひとつの根拠とされている。なにはともあれ、近代国民国家には神話が必要である。 学生時代を思い出すと、中世史につい…

談志による、入れ墨、彫り物、タトゥー

Photo by Silvana Carlos 以前からよく聴いていた、立川談志の講談「白井権八」は、もともとはおそらくCD版だった。おそらく──というのは、ひとたび〈iTunes〉に取り込んでしまえば、どういうメディアで購入したのか忘れてしまうし、どこのどのフォルダーに…