ウラシマ・エフェクト

竜宮から帰って驚いたこと。雑感、雑想、雑記。

二日酔いの特効薬? 常備したいもの

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 馬鹿につける薬と二日酔いの特効薬は無い、という。ただ後者に関しては、Newsweek誌の記事によると、もうすぐ出来するかも知れない(二日酔いの特効薬がもうすぐできる? 酔ったマウスに効果 | ニューズウィーク日本版)。

 いずれにしても、忘れた頃にやってくるのが災いというもので、二日酔いもまた、痛切な反省の記憶が霧のなかに消えた頃、胃の底から脳髄にひびきわたる不気味で異様な跫音がちかづいてきたかと思うと──そのときにはもう、手遅れなのであった。

 というわけで、さしあたり常備しておきたいものを挙げておこう。備忘録がてら。

【第3類医薬品】ハイチオールCプラス 180錠

【第3類医薬品】ハイチオールCプラス 180錠

【第2類医薬品】パンシロン01プラス 48包

【第2類医薬品】パンシロン01プラス 48包

  • 出版社/メーカー: ロート製薬
  • 発売日: 2010/10/12
  • メディア: ヘルスケア&ケア用品

 ただし、上記の品とて、個人的な思い込みから頼っている製品にすぎない。そもそもひろく認知された特効薬などまだ無いはずだが、これが自称・予防薬となると諸説紛々、いろいろで、ときどきコンビニなどには、その品揃えに驚いてしまう店舗もある。たとえば、ウコン、しじみ、牡蠣エキス──いずれも、科学的根拠のあるものはほとんど無いと思ったほうがよさそうだ。が、根拠がないからといって、まったく効かないという意味にはあたらず、のんべえ諸氏の日頃の実践については、意義を否定されるわけではない。種々の民間療法や代替医療が、今日も世界中で生き続ける所以である。そう。古代ローマのむかしから、人類は二日酔いとの闘いに明け暮れてきたのだ。

 ローマ時代の大プリニウス(Pliny the Elder)に言わせれば、ふくろうの生卵が効果覿面(てきめん)。エリザベス朝の英国では、生きたままワインに漬け込んだウナギ2匹が特効薬ともてはやされ、ウナギが苦手な人には代用品としてアオガエルが勧められた。また、19世紀の煙突掃除人は暖かいミルクにスプーン1杯の煤(すす)を入れて飲んでいたといわれる。

二日酔いの特効薬は存在するか? 国際ニュース:AFPBB News

 ──唎酒師の講習のときに「卵醤」というのは小耳に挟んだが、梟の卵とは……。さすがプリニウスである。

 それはいいんだけどさあ、CMなんかじゃよく、あたかも服用すれば二日酔い知らずであるかのように喧伝されているじゃん。あれはどうなのよ──という、われわれの疑問もまた、もっともであろう。

 さき頃(2019年9月)、フランクフルトの裁判所は、二日酔いが医学的な疾患であることを認定し、サプリメント等の製品について、それにたいする治癒および予防を謳ったいかなる広告をも出すことを禁じた。──反響が大きかったのは、むしろ「二日酔いが病気であることが公式に認められた件」としてだったようだが。とまれ、これはしごく妥当な司法判断であり、ひろく知られるべきであろうが、そうなると、二日酔いの患者としては、苦痛から逃れる方途について十全な情報が得られなくなる恐れもあり、けっきょくのところ、医師の診断が必要になるのだろうか。しかし、人びとが二日酔いくらいで医者にかかっていたら、医療機関も健康保険もパンクすることだろう……。

 ところで、ドイツ語では二日酔いのことを「Kater」という。周知のように、これは「雄の猫」を意味する語である。おもしろいのは、報道記事で、脊椎動物のネコと区別するためなのか、わざわざ「Alkohol-Kater」という表現が使われていることだ。「アルコールのほうのカーター(つまり二日酔い)」というニュアンスであろう。たしかに「雄猫という病」と受けとられると話がかわってくるが、そんなことがあるのだろうか。文脈上わかりそうなものである。口語的な「Katzenjammer」という同意語は、文中では避けられる傾向があるようだ。そんなに不便なら、オスネコに代わる、別のいいかたを模索したらよいのに、とも思う。

 その点、チェコ語には問題がなく、“kocovina(コツォヴィナ)”といえば、排他的に二日酔いを意味し、音韻的にも衝突する語は無い。19世紀にドイツ語のKaterにもとづいて生じた謂いらしいが、もとから女性名詞で猫に由来する語であった。現在も、口語で省略ないし婉曲が生じると「kočka」とも言う。これは「雌猫」を意味する一般的な語と同一である。ボヘミアモラヴィアの庶民のあいだでは、わるさを働くのはメスネコのほうなのであった。

 ──とりとめがなくなってしまったが、書き手の二日酔いのためだとご理解いただきたい。

 

*参考:

www.newsweekjapan.jp

www.afpbb.com

www.esquire.com

www.stern.de

www.spiegel.de