ウラシマ・エフェクト

竜宮城から帰って驚いたこと。雑感、雑想、雑記。日欧ブログ……?

20式小銃と宇宙作戦隊

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photo by Kelan Chad

 まず、日本語を学習する際の、あるいは教育する際の話である。「2」と「5」という数については、ほんらい「ニ」および「ゴ」ではあるものの、電話番号などを言う場合などは慣例的にそれぞれ「ニー」「ゴー」と発音されることが多い──ということに、教科書ではなっている。おそらく日本語話者というのは、文脈に応じて適切なほうを選択しつつ運用している。ところが、日本の民営放送局には、いついかなるときも例外なく「ニ」「ゴ」とアナウンサーに読ませている局が複数ある。では仮に「5.555555555」などはどう読ませるつもりなのか。「ゴーテンゴーゴーゴーゴー……」ならわかるが、「ゴテンゴゴゴゴ……」という訓みは日常では聞いたことがない。たまに元NHKフリーアナウンサーなどが同一の報道番組内に混じると「5.5」を「ゴーテンゴ」としぜんに発音していたりするので、「ゴテンゴ」に統一されている局のアナウンサーらの不気味さがいっそう際立つ。「5.56ミリ」なら「ゴテンゴロクミリ」か。巷間ではおおかた「ゴーテンゴーロクミリ」と言われていると思うが……。

 さて、名称の発表とともに実銃が報道公開された20式小銃。20式と書くと、陸上自衛隊では「ニーマルシキ」と読むならわしだが、海上自衛隊に配備された暁には「フタマルシキ」と呼ばれるのだろうか。海軍式で。陸式・海式の別も、日本語の玄妙な謎のひとつである。

 先代の89式小銃とてAR-18の構造を有したが、世界を見渡せば、すでにパテントが切れて世界中にクローンのごとき製品があふれているのがAR-15である。新小銃がAR-15クローンとまでいってよいのかは知らないが、被筒にピカティニ・レイルが施されているなど、外見上は流行の小銃に似たり寄ったりのオーソドックスなものになった。とりわけFNのSCARやレミントンACRに似た印象が強いが、けっきょく大雑把な見てくれは重要ではない。ディテールにこそ神が宿るのだから。

 全長は、調整可能な銃床の伸縮状態によって、783から854mmまで変化するという。米軍のM4カービンが同様に756から838mmということであるから、それより数センチ長い程度。ライフルというよりカービンということにはなるのだろう。さすがに二脚は廃されたかと思いきや、公開時の映像では代わりにフォアグリップが装着されていた。ところが、これがじつはヴァーティカル・グリップ・バイポッド、俗にグリポッドなどと呼ばれるもので、下部から二脚がとびだす。陸自の二脚へのこだわりも根強いものがある。専守防衛・本土決戦の運用思想を反映してか、はたまた叉銃するかわりのスタンドを欲したものかわからないが、保守的であることは間違いない。これで新隊員教育の内容の変更点を最小限にする意図か。ただ、標準で装備されることになるのかどうかは不明である。この位置にグリップがあればあったで、閉所戦闘には都合の良い仕様ではあろう。

 切り替え軸、すなわちセレクターの周囲には、まずかつての64式小銃では、安全、単射、連射の頭文字をとって「ア=タ=レ」と刻印されていた。1989年に採用された89式小銃では、いちど引き鉄をしぼると3発連続で発射される「3点射」のバースト・モードが追加されたから、当初は「ア=レ= 3 =タ」で、のちに一部「ア=タ= 3 =レ」の順序に改修された。けっきょく新小銃では、世界の趨勢にしたがって3点射が廃止され、刻印も「ア=タ=レ」にもどったようだ。切り替える際のストロークも短くなった。しかも、いわゆるアンビ対応となっており、銃の右側だけでなく左側にも同様に操作できるレヴァーがついた。となるとこれまでの89式の初期の仕様について、左側にレヴァーがあると匍匐前進の際に障害となる云々という風説も、いったいなんだったのか。よもや匍匐前進を廃止したのでもあるまいが、興味は尽きない。

 映像を観ると、銃身下部に装着される型のグレネイド・ローンチャー、すなわち擲弾投射器も同時にお披露目されたようだ(GLX160?)。射手を務める隊員が固定されるから、とかなんとかいう説明で陸自がかたくなに装備するのを固辞してきたといわれる形式の火器である。06式小銃てき弾という、銃身に取り付けて発射するライフル・グレネイド式の装備が良くなかったというわけでもないのだろうが、どのような「心境の変化」があったのか、これも訊いてみたいところだ。

 調達にかんしては、89式のようにまたぞろ30年かけるつもりだろうか。豊和工業を後世に渡って維持するための策とはいえ、つねづね批判されてきた予算の無駄である。しかしながら、公共事業という性格もあるいじょう、数百年にいちどのコロナ不況のさなかとあっては指弾しにくくなってしまった。

 いっぽうで話題になっていたのは、メディアによる「フェイクニュース」工作というものらしい。防衛相による表現である。イージス・アショアの一件だが、配備候補地選定の大詰めの段にいたって、正式な公表を前にした「不要不急の」報道にも思えた。しかし、こうなってみると悪い印象を払拭するのに、陸自の手持ちの弾薬のうちでいちばんの貫通力を有するタマは何か──それがこのタイミングで新小銃が公開された所以ではないか。月曜日に公開します、と直前の週末にTwitterで発表されたのが唐突なように思えて、邪推してみたにすぎないが。

 地上型迎撃ミサイルシステム配備の構想は、21世紀初頭にはもちあがった長年の悲願とはいえ、イージス・アショアはじつに高くついた。しかし振り返ってみると、2017年当時はトランプ大統領の手前もあった。思いやり予算の増額をふっかけられていたら、さらに高い出費を被りかねなかったことを思えば、導入の決定はさほどの悪手でもなかった気もする。技術的にあらたな脅威の存在も徐々に伝えられている折りでもある。とまれ、将来的にはともかく従来の弾道弾対処能力は海自がすでに有することから、不要不急の買い物である感は否めない。時節がら、コロナ禍の経済対策でキャッシュが要るんです、ごめんなさいねと契約を一旦キャンセルすることができればよいのに、とは誰しも考えるところだろう。また揉めそうだ。

 そこへ航空自衛隊からも「宇宙作戦隊」の報道である。部隊新編にかかわる改正法案はすでに2020年4月17日、国会において可決、成立していたが、5月8日にいたって正式に命名された。報道によると、主な任務が「日本の人工衛星を他国からの攻撃や妨害、それに宇宙ごみから守るための『宇宙状況監視』で、不審な人工衛星の動きや宇宙ごみの軌道の監視」となっているのはよい。

 けれども、件の名称がひっかかる。これまで自衛隊用語の用法では、できるだけ「作戦」という語が避けられてきた印象で、「運用」などとするのがつねだった。今回はあえて避けなかったように見えるが、どうしてか。個性の強い大臣の独自色なのかもしれない。とまれ、レーダーで警戒監視をおこなう「警戒隊」というのがすでにあるのだから「宇宙警戒隊」ではいけなかったのか。任務から語を引くと「宇宙監視隊」とか。あるいは端的に「航空自衛隊スペースデブリ監視隊」という選択肢はなかったのか。長いか。

 推測するに、米軍のカウンターパート等の名称まずありき、だったのではないか。それが「Space Operations Squadron」で、おそらくこれが正式名称よりも前に念頭にあった。それを和訳した。squadronはふつう、飛行隊とか飛行中隊と訳される。だが、いまのところ宇宙を飛ぶ予定もないから「飛行隊」ではさすがにおかしい。そこで「飛行」が排除されたものの、つぎはoperationsをどう訳すかという問題につきあたった。「宇宙運用隊」としたのでもやっぱり「宇宙で何を運用するんだ」という、目的語を欠いたすわりの悪さがある。けっきょく「作戦」の訳を採って、「宇宙作戦」をする「隊」と決まったものと思われるが、それでもしっくりはこない。

 単に「宇宙隊」ではいけなかったのかとも思うが、そうすると英語では「Space Squadron」となって、カートゥーンにも同名のタイトルが存在していたこともあり、コラボも期待できたかもしれないが、それはそれで弄られそうだ。米語メディアにも「Air Force space squadron」という謂いが散見されるとはいえ、正規に銘打つとなるとどうなのか。日米の合同演習が家常茶飯となるなかで、英語の名称もまた以前より重視されているように思われる。装備品であれば、防衛省規格で訳語が厳密に規定されているから、機械的に語を置き替えれば済むはなしだが、部隊名となるとやっかいだ。

 

 

*参照:

www.jiji.com

www.sankei.com

hobbyjapan.co.jp

mainichi.jp

www3.nhk.or.jp

www3.nhk.or.jp

www.fnn.jp

globe.asahi.com