ウラシマ・エフェクト

竜宮から帰って驚いたこと。雑感、雑想、雑記。

シン・コロナ

f:id:urashima-e:20200313020225j:plain

photo by Jens Johnsson

 WHOがとうとうパンデミック宣言を発出した、と報じられた。「世界的大流行」と定義されたところで、流行が止まってくれるわけでなし、株価とて上昇しはじめるわけでもあるまいが。多くの識者は主観的には、パンデミックといってよい情勢になっていると久しく感じていたにも拘わらず、WHOが宣言していなかっただけなのだ──とおおかたには受け止められているようだ。

 WHOにおけるパンデミックの尺度に変更があって、運用基準が変わったという解説もあるにはある。また、囁かれつづけてきた中国共産党への配慮というものがどれだけあったのか、なかったのか、むろんそれも定かではない。とまれ、すくなくとも前例を踏襲する必要があるとすれば、2009年のインフルエンザによるパンデミック宣言を教訓のひとつにしていることは間違いない。

 その前回のパンデミックをテーマに、2008年1月に放映されたTVドラマがある。『〈NHKスペシャルシリーズ・最強ウイルス第1夜ドラマ・感染爆発~パンデミック・フルー』がそれで、再現度の程はもはや黙示録的な何かである。忍び寄る予兆を受けて制作されたものであろう、疫病と闘う際に医療機関が直面する困難の数々が微に入り細を穿ち、克明に描かれている。また、作中の「H5N1型」を「新型コロナ」に変えれば、現今の問題とて見えてきそうだ。これを鑑賞すると、イタリアにおける爆発的な感染と莫大な死者の謎についても、まざまざとした想像をめぐらせて類推できるように思えてくる。医療現場における人的・物的なリソースの絶望的な逼迫も描写されているからである。

 思えば、当時は忙しくて日本に帰ってきていなかったから、この番組じたい知らなかった。が、いま見ても、よく練られたシナリオであることにくわえて、豪華俳優陣も物語を盛り上げているのがわかる。2017年に亡くなった藤村俊二も重要な患者を演じているし、看護部長役の深浦加奈子はこのとき癌に冒されており、まもなく亡くなった。劇中、村の診療所で孤軍奮闘した老医師役の佐藤慶も、いまや鬼籍の人である。

 これを『シン・コロナ』と思わず呼びたくなったのは、もちろんゴジラの代わりにインフルエンザ・ウイルスが上陸し、それに抗して官僚たちが闘うというプロットによるわけだが、映画『シン・ゴジラ』とおなじく、会議のシーンが多いことにもよる。娯楽作品にあっては、読者や観客や視聴者に情報を小出しにして、次の展開を予測させたうえで、その予測を裏切るシーンを入れる──というシークエンスを繰り返して物語を構成する必要がある。その点、たしかに会議の場面というのは定番で、これは事情通と狂言廻しを一堂に集めて、自然な形で情報を伝えやすい仕組みだからであろう。そういえば同様に架空のパンデミックを扱った映画『復活の日』でも、みんなで雁首を揃えて延々と評定するシーンが印象に残っている。

NHKスペシャル シリーズ 最強ウイルス DVD-BOX

NHKスペシャル シリーズ 最強ウイルス DVD-BOX

  • 発売日: 2008/11/21
  • メディア: DVD

設定は2008年11月。日本海に面する寒村でH5NI型新型インフルエンザの患者が相次いで確認された。村を徹底的に封じ込め、根絶を図る政府。しかし、ウイルスは信じられないスピードで東京中にまん延、感染者・死者は数万人に達する勢いに。社会システムの停滞。医療現場の崩壊…。ウイルスに侵された人々が行き場をなくす中、医師・田嶋(三浦友和)は、自分の病院に新型インフルエンザの患者を受け入れることを進言する。

NHKスペシャル シリーズ最強ウイルス 第1夜 ドラマ 感染爆発~パンデミック・フルー~ | NHK名作選

www2.nhk.or.jp

www6.nhk.or.jp

www3.nhk.or.jp

jp.reuters.com

www3.nhk.or.jp

シン・ゴジラ

シン・ゴジラ

  • 発売日: 2017/03/22
  • メディア: Prime Video
 
復活の日

復活の日

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video