ウラシマ・エフェクト

竜宮から帰って驚いたこと。雑感、雑想、雑記。

北マケドニア──国号変更。

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 友人に誘われ、ギリシアの知人を訪ねて旅した際、かの地の若者たちが憤っていた相手が、宿敵トルコとともに、北隣のマケドニアだった。

 曰く、「マケドニア」というのは、誇り高きギリシアの偉大な歴史の一部であり、それを盗用し、国名とすることは許しがたい僭称である──という言いぶんなのだった。「スコピエ」とでも名乗っておけ、と。

 「マケドニア旧ユーゴスラビア共和国」とも称していたが、それすらも許されないような勢いであった。

 それが半年ほどまえに、 改名の報が出た。セヴェルナ・マケドーニヤ──つまり、「北部マケドニア」とする案が採択されたわけだ。

www.bbc.com 個人的な経験から、どうしてもギリシア側に同情的になってしまうわけだが、一方の「北マケドニア」の立場からかんがえてみると……新興の多民族国家が、統一されたネイションを創り出すには、歴史に裏打ちされたアイデンティティが必要──ということから、アレクサンドロスの古代王国は、おあつらえ向きだったにちがいない。

 だから、「NATOEUへの加盟には、国名の変更が条件」といわれても、はいそうですかと、「マケドニア」の国号を手放すわけにいかない。ナショナル・アイデンティティのおおきな部分を失うことは、国民国家そのものを揺るがしかねない。

 じっさい、昨年9月末の国民投票は、右派のボイコットにより不成立、とも報じられた。むろん、NATO/EUとロシアとの綱引きの結果でもあるのだろう。

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 むろん、この「北マケドニア」という「妥協」にすら、反対しているギリシアのひとびととて、少なくない。また、ロシアのように、この手の紛争が解決されないほうが、国益になるという周辺国もあろう。www.cnn.co.jp

  とはいえ、世界の言語における日常の呼び名(外名ともいう)は、これまでと変わらないだろう。日本政府も「マケドニア」を承認してはいなかったが、代替の名称はあまりにも長大だった。英語圏なら「マセドーニア」、スラヴ圏なら「マケドンスコ」などと、無頓着に呼ばれていたのも、同様に致し方あるまい。──だが、これからは、「北マケ」という選択肢もあることを、日本語ユーザー諸氏には、ひかえめに指摘しておきたい。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/5/5c/Flag_of_Greece.svg

 

  ──でもやっぱり、国号も「スコピエ」でいいと思う。 

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参)

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