ウラシマ・エフェクト

竜宮から帰って驚いたこと。雑感、雑想、雑記。

エクストラヴルストとは、なんぞや

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エクストラヴルスト

 承前。警察犬"REX"シリーズでおなじみのヴルストゼンメルとは、エクストラヴルストを、小ぶりの白パン、カイザーゼンメルに挟んだサンドウィッチである。本来的には、"エクストラヴルストゼンメル"というところであろう。

  では、このエクストラヴルストとは。

  お役所のサイトで、エクストラヴルストをめぐる、いろいろの事柄がまとめられている。

 オーストリア共和国の「持続可能性および観光省」のサイトにあったテクストによれば、エクストラヴルストとは、伝統的なオーストリア風のソーセイジで、ブリューヴルストの一。ウィーンでは、この語は1820年には知られていたという。原則的に、牛肉あるいは豚肉、またはその両方に、シュペック、水、食塩、香辛料、多くの場合、いくらかのでんぷんを加えてつくられる。

 シュペックというのは、脂たっぷりの部位からつくられる、ほぼラードみたいなベイコンを想像しておけば間違いない。スーパーなどにゆくと「85%脂肪分をカットしました!」というような、健康志向タイプのエクストラヴルストもあって、こうした製品には、シュペックはとうぜん用いられていないが。

 とまれ、地域によってスパイスや風味に多様な差異があるにせよ、オーストリアでもっとも人気がある加工肉製品のひとつとなっている由。

  ふるくは、牛の小腸に充填され、燻製にされてから煮て、製造されていた。今日では、煙と水蒸気を透過しない人工のケイシングが用いられ、おおくは燻煙せずに湯煮して製造されている。

 といっても、ギリシア・ローマのむかしから生産されていたものでもなければ、中世に一般の農家で手づくりされていたわけでもない。というのも、エクストラヴルストの生産には肉の細断や筋肉のたんぱく質の分解を可能ならしめる、近代的な産業設備が不可欠で、それなしには、特徴的な「なめらかなくちあたり」を実現することはできないためだという。

 厳密な定義や製造方法については、『オーストリア食品法典』によって、さらに仔細かつ厳格に定められているが、ここでは省く。

 さて。エクストラヴルスト──その名称にも、興味がひかれる。

 副詞としての「extra」は、独和辞典によれば「別に、別個に、特に、特別に、故意に」といった意味があり、名詞の「Extra」ならば「特注(部品など)」ないし「オプション・パーツ」というような意味で、くわえて、接頭辞的な形態素「extra-」によって、「特別の」とか「飛び切り上等の」という意味合いが、さまざまな名詞や形容詞に付加されることになる。

 そうすると、エクストラヴルストというのは、「飛び切り上等のソーセイジ」という意味かと類推されるが、個別具体的な加工肉の種別、つまり品名としてこの語が用いられているのはオーストリアにおいてのみであることは、つとに知られている。

 いかにして、この種の加工肉が「飛び切り上等の」と呼ばれだしたのか、詳かではないものの、まあ、すじはとおっている──と、件のテクストの執筆者(3人のうちのだれか)は述べている。要するに、ほかの種類の製品よりも、きめが細かいからである、と。なるほど。

 ちなみに、連邦ドイツにおいて──要するに標準ドイツ語で「Extrawurst」といったばあいには、特定の加工肉の品名にあらずして、「余分なソーセイジ」を意味するに過ぎず、「余計にソーセイジをもらう」すなわち「えこひいき」に関わる慣用表現としてもっぱら使われる。

 東京のドイツ大使館もつぶやいたりしている。

 

  

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