ウラシマ・エフェクト

竜宮から帰って驚いたこと。雑感、雑想、雑記。

えなりるわっほなう──"Brexitの唄"

 えなりるわっほなう

  ──というと、なんのことか、わからないが、諏訪哲史の小説『アサッテの人』にある文言。 

「えなりるわっほなう、

えなってりえにえっさ、

あぽーまーせーとといーまーせ、

あびーじらにあうばったう、
あくらいびんとーざた、
いすーませーふお、
いなねほとぅ、
めきくりとふ、
えばわりらいえんよーしゃあーるっ、れっ、
たんでんいんざら、
あーらちゃ、
うえーぴーぽーせーいんまがーざったっしーすとーでな、
のぽーりなっりっめえーいにん、
めーあーぜーごほん、
ああざーでのおーまのん、
あろーなげんーぬ、なっちゅるい」 

 ──諏訪哲史『アサッテの人』〈講談社文庫〉(講談社、2010)81f.

 

 ギルバート・オサリヴァンの「Alone Again」の歌詞が、ひらがなで表記されたものだった。

 Gilbert O'Sullivan "Alone Again"

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 音訳というのは、個人的に興味のある分野だが、原語の発音を日本語の音韻にする際、どの程度ディフォルメするか、翻訳者の匙加減にかかっている。

 小説自体は、芥川賞受賞作の佳作で「構成のための構成」──という観のある作品。去年の同賞受賞作は「描写のための描写」だったし、ことし、先月の受賞作は「説明のための説明」というような小説だった。だから、そうした基層的性質を徹底させることが、よい小説の条件なのかもしれない。

 語り手(書き手?)が、失踪した叔父の謎めいた人物像を、のこされた手記を手がかりに、「アサッテ的感性」の詳述を軸に描写、ないし造形してゆく──という小説の第一稿、という体裁の小説。

 メタ的な位相が目立つように書かれているのは、そもそも、それを批判する目的があった、と著者は文庫版あとがきで述べている。

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アサッテの人 (講談社文庫)

アサッテの人 (講談社文庫)

 


 想定されるBrexitの混乱もいよいよ迫ってきたなか、ホンダが、スウィンドン工場を閉鎖するという報道があった。ギルバート・オサリヴァンは、そのスウィンドンの出身。

 ──それは偶然としても、英国のEU離脱という政策は、どうも 、作中「アサッテ」と表現された、突飛な行動を連想させる。

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ギルバート・オサリヴァン/アローン・アゲイン

ギルバート・オサリヴァン/アローン・アゲイン