チーズはどこへ
スペンサー・ジョンソンのベストセラー『チーズはどこへ消えた?』では、チーズは、シンボル化された「ひとが人生において追い求めるもの」だった。
迷路のなかに住む、2匹のネズミは、チーズが入手できる場所を発見して、その恩恵に浴していた。が、ある日とつぜん、チーズは出現しなくなる。ネズミらはチーズを求めて、別の場所へ捜索の旅にでる。いっぽう、同じ迷路には小人もふたり住んでおり、同様にチーズを得ていた。ところが、そのふたりはチーズが出なくなっても腰を上げず、チーズのほうが勝手に戻ってくるかもしれないと期待しながら待っているのだった──
先日、4年ぶりで会った旧友のことでおもいだした。
以前はよくSMSで申し合わせて、近所の中華料理屋へ行くことがあった。といっても、日本の中華屋とは似つかない。「中国人がやっているレストラン」というほうが、正確なイメージだ。
びみょうな差異になるけれども、チェコ語で「do Číny」といえば、初級の教科書どおり「中国へ」行くという意味になるいっぽう、「na čínu」というと、「中華をたべに」行くということになる。
とにかく、その日も「中華に行こう」ということになって、まず欧州式にスープから平らげた。
蛋花湯 [タンホヮタン] というのか、酸辣湯 [サンラータン] だったか、日本人にとってはお馴染みの、ふわふわした溶き卵がはいっているやつだった。
──なんだったんだ。あれ。
──なにが。
──スープのなかにふわふわ……
──ああ。卵だよ。
──卵か。チーズかとおもったぜ。
斜め上の発想だ──と感じたのは、こちらが日本人だからか。ところかわれば、なんとやら。チーズはそれだけ身近な食材なのだ。
あれから何年も経った。つぎのチーズをさがすのが億劫でしかたがない。しかし人生、つねにチーズを探しまわっているようでなければ……。やつのように。
- 作者: スペンサージョンソン,Spencer Johnson,門田美鈴
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