ウラシマ・エフェクト

竜宮城から帰って驚いたこと。雑感、雑想、雑記。日欧ブログ……?

コロナ・パニック

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photo by ICiprian

 悲惨である。イタリアでの死者数は、すでに中国のそれを超えた。中国共産党の数字など信用できぬと嘯いていた大臣にとっては案の定というところか、4万人ほどの感染者の数字をカットして隠蔽していたという報道もあったにせよ。

 ミラノ公国は16世紀にはスペイン・ハプスブルク朝、18世紀からはオーストリアハプスブルク家支配下にはいっていた。イタリア統一戦争の結果、ロンバルディアサルデーニャ王国に割譲されたとはいえ、つまるところ、北イタリアといえばティロールの延長にも等しい。移民問題以前には検問すらなく、ややもするとオーストリア国内という感覚でひとの往来があった。そんなところで、アウトブレイクによる惨事が起きているのだから、早くからオーストリア政府は気が気ではなかったことだろう。ここで冷静さを欠いた対策が示されていれば、日ごろ旧宗主国をちらちら見ながら政治の舵取りをしている「継承国家」群にもパニックは波及していたかもしれない。

 大陸封鎖の様相をいったん脇に措いて、英国の対応をみて思った。ドーヴァー海峡を渡るとそこは未知の国だ。

 英ジョンソン首相が「集団免疫」戦略について表明したときは、早いなというくらいの感想であった。つまり、どの国とて、この戦略を採ってはいるが、ピークを遅らせるために当面は封じ込め戦術で戦うしかない。ところがひとり英国は、スーパー・コンピューターとビッグ・データのご利益で、どのくらいの感染者や死者が出て、どれくらいの期間で終熄する──というような青写真が早く描けたのだと。だが、ほかのどの国も国民にそんな風には犠牲を強いていない。

 その後、インペリアル・コレッジ・ロンドンのお説、つまり、このままいけば「8月までに51万人が死亡する」由を重く見るや、英国は方向転換した。現状で各国が試みている封じ込め戦術を、あわてて採ったのである。──この戦略撤回は遅すぎたとみえる。ロンドンあたりではパニック買いで、スーパーの棚から子どものミルクが消えたと悲鳴が上がっている。

 むろん、ポピュリスト政治家のパーフォーマンスなど真に受けるべきではないが、各国政府の面子とて、いまや似たようなものだ。人類に経験のないコロナ禍ゆえ、多少の混乱なら致し方ない。だが、国民の不安を助長するような政府首班ならいないほうがいい。宣くに──これから多くの人が死にます。25万人死にます。集団免疫戦略です──政治家なのだから、いくら本当のことでもこんな言い方はしないほうがいい。投票する候補を人柄で決めるなどというと莫迦にしてきたものだが、非常時には吉と出ることもあるらしい。いまおもえば、不安にさせまいと、やさしく国民に語りかけた墺ファン・デア・ベレンお爺ちゃん大統領の演説は感動的ですらあった。立場が異なるとはいえ、対照的だ。

 けっきょくは、「封じ込め」と「集団免疫」の両方を適切に組み合わせて、医療崩壊を防ぎつつソフトランディングさせるような戦略しかないようにも思える。それが戦略などという、たいそうな名に値するかどうかはともかく。人権など顧みず、また人的リソースがゆたかで、人海戦術が採れる国はこの限りではないかもしれないが。

 ワクチン開発にはまだ時間がかかるため「出口戦略などない」という趣旨の記事がBBCに出たと思ったら、今度はアゴラで「出口戦略を描け」と吠えたのは池田信夫先生だ。日本の状況は比較的おちついているから、学校の授業を再開し、自粛を解除させよ、ということらしい。──トリアージ導入はもう仕方がない。人権だ差別だなんだとわめいたところで、残念ながらリソースは限られており、もはや戦争ともいえる状況とあっては、どの国の医療システムでも野戦病院を模した運用をするしかあるまい。

 日本の感染者数の比較的なすくなさは、どこから来ているか、という類推もつづいている。すくなくとも現在まで医療崩壊を回避できた理由として、日本における人口あたりの病院数とCTの普及台数の高さがSNSでは話題になっている。このところ医療費削減に躍起になっていた政府だが、皮肉ではある。

 欧州連合、すなわちトッドのいう「ドイツ帝国」が、イタリアに緊縮財政を求めた結果が、北イタリアにおける医療崩壊の遠因であるとすれば、これもあまりにも皮肉である。「プロイセン」たる連邦共和国からしてからが、いまや自国一国を守ることに汲々とし、結果EUの足並みが乱れ、その存在価値が問われる事態ともなっているからだ。しかし、さらに愚かなのは、その「帝国」に経済的におんぶに抱っこのていでありながら、ことあるごとに反対意見を表明し、民衆の支持を得んとしてきた「保護領」諸国のポピュリスト政治家であり、ユーロにも参加せずにきた小国の政治家にいたっては、自国通貨のチャートの動きを見るに何を思うのだろうか。

 ──と、イライラをまとめてみた。コロナ鬱のいっぽ手前であろうか。

 

*参照:

www.madamin2.me

www.cnn.co.jp

agora-web.jp

www.bbc.com

www.bbc.com

mainichi.jp

togetter.com

note.com