ウラシマ・エフェクト

竜宮から帰って驚いたこと。雑感、雑想、雑記。

パンデミックと相場

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 2014年の「NISAの大号令」によって日本国の国策が示された。すなわち、国民一億すべからく投資家たるべし──

 東日本大震災福島原発事故の直後、お見舞いめいた口上を述べながらも、しれっと暴落した東電株を買い込んでいたチェコ人の友人らには参ったものだったが、ユーモアのセンスのあるドイツ人が稀少であると言われるのと同様、義理堅いチェコ人もまた稀であるからして、そもそも連中はシュールレアリストか、サイコパス……よくいえばリアリストなのだと思っておいたほうがよいのだろう。ここはひとつ自らの能天気さかげんを戒め、いずれの世にもまっさらな善人などいないのだ、という心構えでいるべきなのかもしらん。

 さて、コロナ禍である。折しも決算発表のシーズンと重なったが、すでに織り込み済みのところもあれば、見送った企業もある。

 情報が武漢からなかなか出てこなかった時分には、証券会社のアナリストたちも呑気で、SARSのときもMERSのときもXXか月で市場は落ち着きましたから、今回もほどよく下がった銘柄を物色する買いがはいっております──というようなポジショントークを展開していたものであった。

 だが、3700人かそこらの船客を隔離させる施設も危機意識ももたぬ日本政府を海外メディアがちくちく批判するようになるにつれ、また、トラックできない感染者が全国に現れるにおよんで、市場のほうもいっそう不透明感が濃くなった。

 疫病は実質的には隔離に失敗しており、人類全体の危機にむすびつきかねない──という観測もでてきた。2月13日を境に、湖北省武漢市のトップが交代し、治療の体制や集計の方式もすべてが変わった。それにも拘わらず、「世界の3分の2が感染する可能性」があると統計学の専門家がいうのである。いっぽうで、中国の専門家委員のトップは「節目は2月20日」であると主張している。

 ──それぞれ、ブルームバーグの報道と中国の関係者の謂いである。いずれも所詮ポジショントークであるから、鵜呑みにしてはいけない。そこで虚心坦懐、ザラ場に目を凝らしてみれば、東証で連日のように上げているのは「コロナ関連銘柄」ばかり。医薬、試薬、化学から、臨床検査薬、実験機器、マスク、ゴーグル、防護服などの感染防護商材や殺菌消毒剤関連。空気清浄機、クリーンルームの製造販売、医療施設開設運営、コンサル等々……あたかも投資家たちは人類の勝利を確信しているかのごとくである。すくなくとも短期的には。

 習近平王朝、ひいては中国共産党の天下もさすがに揺らぐのではないかという見解は早くから出ている。いっぽう、株価と外交で支持率を稼いできた安倍政権はといえば、野党が「桜を見る会」追及をつづけて遊んでいるかぎりは安泰だろう。──政治不信、マスコミ不信、ひいては人間不信……それらが昂じると、けっきょく神の見えざる手、すなわち市場だけが信用に足る、などという境地にひとは至るのかもしれない。

 

*参考:

www.bloomberg.co.jp

www.businessinsider.jp

gisanddata.maps.arcgis.com

sekai-kabuka.com

 

*【用語解説】パンデミックとエピデミックの違い:

www.bbc.com

 

*追記:

www.nikkei.com