ウラシマ・エフェクト

竜宮城から帰って驚いたこと。雑感、雑想、雑記。日欧ブログ……?

アリタリア航空の秘かな愉しみ

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photo by MateoPL

 またいつかイタリアを訪れてみたい──のは山々であるにせよ、それができないのにアリタリア航空の便に乗るのは、切符が安かったから、という理由に決まっている。万年再建中の航空会社のエコノミークラスである。であればこそ、利用者はすべてにおいて割り切って利用している。

 それでも、記憶に誤りがなければ、むかしのアリタリアだったなら、エコノミーでも機内食パルミジャーノ・レッジャーノが出てきた。地味な存在ではあるが、ほかの品が口に合わなくとも、これで少しく救われる。エールフランスでよく出てくるカマンベール同様、ちょっとした愉しみで、ワインの残りと一緒にいただいたものだった。──それがいつしか(いつだろう)、エコノミーではパルミジャーノにありつけなくなった。

 原因・理由として、機内でつらつら考えたことは二つ。ひとつは、パルミジャーノの相場が上がったことで、この数十年間のチーズ全般についての価格の上昇は、やはり中国人がゆたかになって、十何億という舌が醍醐の妙味を覚えてしまったことに帰する(そういうことにしておく)。そして、いまひとつ思い浮かんだのが──いよいよアリタリアの経営が危うくなってきたのか、という自然な連想であった。

 もう長らく低空飛行をつづけ、やれスコーク7700だ、メーデーだ、落ちる、落ちるよといわれつづけながら、アリタリアが飛びつづけていたのは、フラッグ・キャリアとしての意地と特権とによっている。イタリア政府の意向で延命されていたわけだが、JALも一度やっているから、これは仕方がないと思われがちであった。

 同時多発テロや燃油の高騰といった世界史の荒波に見舞われ、実質的に国有化されたのはやむを得まい。その後、曲折を経て民営化が済み、エティハド航空の傘下におさまったものの、またも破綻した。だが、昨年はANAとの包括提携が発表され、コードシェア便の運行も開始された。今年にはいってからは、デルタ航空の名が報道に現れるなど、光明が差したかに思えた半面、まだまだ再建の道は遠い……というふうにもみえた。

 ──ところが、先日のこの華々しい「ベスト・エアライン・キュイジーヌ賞」受賞の報せである。この賞について、詳細まではわからない。ひょっとすると、モンドセレクションのごとく生ぬるいものなのかもしれない。とまれ、10年連続だというではないか(アリタリア航空、10年連続「ベスト・エアライン・キュイジーヌ賞」受賞 | FlyTeam ニュース)。

 経験則によると、経営体力に余裕のある航空会社ほど機内食が旨い。だがアリタリアは、破綻中も淡々粛々とイタリアの「食文化を世界に発信」してきたのだということになる。「消えたパルミジャーノ」の印象が強いものだから、単なる思い込みにもとづく議論になってしまうが、どうやってコストの節減に努めながら、機内食の水準を維持したのだろうか。

 あるいは目に見えるほどの緊縮策はとっていないのかもしれない。というのも、さらに「ベスト・ビジネスクラス・シート・デザイン賞」なる賞も受賞しているのだから。

このほか、「ベスト・ビジネスクラス・シート・デザイン賞」も2018年に続き2年連続で受賞しています。イタリア高級ブランドであるポルト・ローナ・フラウ社の柔らかい総革張り電動リクライニング・シートはフルフラット・ベッドになるほか、マッサージ機能も搭載しています。

 https://flyteam.jp/news/article/118798

 

 さて、そんなアリタリアをもてこずらす者が存在しようとは──という噺で締めたい。

 あるときの便は、プラハ発のミラノ・マルペンサ経由、成田空港行きであった。ČSAチェコ航空の運行するエアバス機でミラノまで行ってから、アリタリアボーイング機に乗り換えたわけだ。

 成田に到着して、預け入れた荷物を取りに「手荷物引渡場」にいた。ほかの乗客の荷物をのせて廻転しつづけるキャラセルをしばらく見つめていたが、目当てのスーツケースはいっこうに出てこない。ミラノでの乗り換え時間が短かったので仕方がないな、とは思った。ディレイド・ラゲジというトラブルである。

 カウンターに相談に行くと、はたして、アリタリアの制服を着た日本人の地上係員が陳謝しはじめた。──曰く、チェコ人が規定の時間内に荷物を渡さないので、それでいつも困っているんです、と。

 あのイタリア人を、それもいつも困らせるほどの、いつものチェコ人の呑気さかげんである。然もありなん。想定を裏切らないチェコ航空であった。恐縮するアリタリアの女性係員をまえに、つい笑ってしまった。チェコ側に訊けばおそらく、マルペンサ空港のイタリア人のせいだ、と弁解するはずだ。かくて日頃から揉めているのが目に浮かぶようだった。──思えば、かつてはひとつの国に暮らしていたのだ。イタリア人もチェコ人もそうやって、皇帝フェルディナントやラデツキー将軍を辟易させたのだろう。

 デルタ航空も両社と同じスカイチームに加盟していることから、とうぶんの間、この凸凹コンビはつづきそうである。 

エクスプレッソ・ウィングス 1/500 B777-200ER アリタリア航空 完成品

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  • 発売日: 2013/08/29
  • メディア: おもちゃ&ホビー
 

 

*参考:

flyteam.jp

www.alitalia.com

www.dreamnews.jp

www.nikkei.com

www.sankeibiz.jp