ウラシマ・エフェクト

竜宮から帰って驚いたこと。雑感、雑想、雑記。

得体の知れない隣国について知るために

パブリックコメント募集からのパニック

 ──承前。

 この2週間あまり、日韓関係に関する報道が、かつてない盛り上がりをみせている。

 きっかけは、韓国にたいする貿易上の優遇措置を取り消すという、日本国政府の方針が報道されたことだった。

 じっさいには、7月1日付けでパブリックコメント、意見募集が開始されたのみで、その対象 は経済産業省貿易管理課が所管となっている「輸出貿易管理令の一部を改正する政令」だった。これは、安全保障上クリティカルな物品の輸出に関して簡便な手続きで済ますことができる「包括輸出許可制度」の対象国、いわゆる「ホワイト国」のリストから、2004年いらい対象に含めていた韓国を削除する、という改正にすぎなかった。

search.e-gov.go.jp

 だが、この件の報道と反響は、ウェブ上のメディアを見ているだけでも凄まじいものがあった。フッ化水素、フォトレジスト、フッ化ポリイミドの3品目について、その製造方法や用途、主たる製造メーカーや世界シェア、さらには大韓民国の主要企業やGDPがどれだけそれらの物品に依存しているか──などの知識を、日本国民は一夜にして得るに至った。

 すでにAppleのマネジャーが韓国のSamsung社を訪れ、おそらく半導体の供給不安の払拭と、問題の早期解決を要請した、と伝えられてもいる。──そうだった。われらがiPhoneとて、韓国製のチップで動いていたのだった。

www.apfelpage.de

 

かの地の新聞メディア、日本語版

 他人事とはいえ、ここまでの騒ぎになると、韓国側の対応までもが気になるのが人情だから、ニュースに気をつけるようになったひとも多いだろう。といっても日ごろ興味のなかったハングルがすぐに読めるわけでなし、特定の便利なサイトに俟つことになる。

 韓国内で「保守系」とされる『朝鮮日報』『東亜日報』『中央日報』の大手3紙はウェブにて、あまりこなれていない訳文ながら、日本語版を読むことができる。助数詞などの細部がおかしかったり、言いまわしなどが日本語になりきっていないきらいがあるのだが、それは「戦犯旗」とか「日王」とかといった、日本語の辞書にない語を(つまり日本語ではない語を)そのまま使用せんがためでもあろう。が、たいていの記事の内容は意外にまともである。

 新興の『ハンギョレ』紙にも同様のサーヴィスがあるが、こちらの記事は、おおよそ意味のとおらない、まさに「半ギレ」するがごときの脊髄反射的で扇情的な怪文書のようなものが多い。所詮はカストリ的大衆メディアなのかもしれぬが、こうしてみると『朝X新聞』などは、よっぽど理知的で穏当な高級紙だ。

 

得体の知れない国について知る──邦語文献4点

 しかし、この間、おそらく多くの人が見守っている韓国政府の対応も、「禁輸」になったわけでもないのにパニックにちかいものがあって、それこそ脊髄反射的に無意味な要請ないし恫喝を、こだまのように繰り返している──曰く、これは輸出規制だ、禁輸だ、我が国わが民族に対する制裁だ、対抗措置だ、世界の自由貿易サプライチェーンを脅かす、国際的に許されない暴挙だ、非があるのは日本のほうだ、外交欠礼(?)だ、歴史問題をただしく認識し、非人道的な行いを反省せよ……といった調子で、論点をあいまいにすると同時に、いつもの民族的集団ヒステリーの炎に油を注ぐのみである。

 それからとってつけたように、話し合う準備はできている、協議に応じよ、と居丈高に要求しはするものの、じつは無策であるばかりでなく、ほんとうに解決を企図しているようには、まったく見えない。

 こうして、対馬から50kmという一衣帯水の地に、こんな得体の知れない国があったのかと、あらためて気づいた向きもおおいと思う。──海外に居たがために「韓流」を体験していない筆者のような者ばかりでもあるまい。なにしろ、報道に接すれば接するほど、話の通じない奇怪な隣国の謎は深まるばかりなのだ。

 そこで、手っ取り早くAmazon Kindleでも読める参考文献を4点、以下にとりあげてみた。

  1. 峯岸博『日韓の断層』日本経済新聞出版社、2019
  2. 武藤正敏『韓国人に生まれなくてよかった』悟空出版、2017
  3. 古川勝久『北朝鮮、核の資金源──「国連捜査」秘録──』新潮社、2017
  4. イザベラ・バード、時岡敬子訳『朝鮮紀行』講談社 (講談社学術文庫) 、2017(単行本1995)


1) 峯岸博『日韓の断層』日本経済新聞出版社、2019

日韓の断層
日韓の断層
 

  もとの日経新聞ソウル支局長・峯岸博氏が、日韓関係がかように拗れてしまった背景を、現地での取材経験をもとに、ときには社会学的な世代論をも駆使して解説している。コンパクトな、紙媒体換算215ページの新書版で、手軽に読める。刊行も2019年5月と、新しい。

 政権が代わる度に卓袱台をひっくり返されたのでは、あらゆる協定は無益であり、協議は不毛でしかないが、そうした外交姿勢がいかなる内在論理に由来するのかが、平易に明かされている。

 

2) 武藤正敏『韓国人に生まれなくてよかった』悟空出版、2017

韓国人に生まれなくてよかった

韓国人に生まれなくてよかった

 

  「文在寅クライシス」という謂いで、目下の現象の本質と、かの国の衆愚政治の闇を喝破したのは、ソウル駐箚日本大使を務めていた武藤正敏氏がおそらく最初であった。人びとが反日的言動に逃げ込む背景を、韓国社会を分析することで解き明かしている。

 

3) 古川勝久北朝鮮、核の資金源──「国連捜査」秘録──』新潮社、2017

北朝鮮 核の資金源―「国連捜査」秘録―

北朝鮮 核の資金源―「国連捜査」秘録―

 

 「ホワイト国」抹消問題の背景にある安全保障上の問題とは、イランという存在もあるにせよ、端的には北朝鮮問題であって、要は「なぜ北朝鮮は厳しい制裁を何度も受けながら、核兵器や長距離弾道ミサイルを開発することができたのか」という疑問にゆきつく。
 「国連安保理決議1874号に基づく専門家パネル(北朝鮮制裁担当)」に所属し、4年半にわたり、じっさいに現場で調査をしていた古川勝久氏が、ドキュメンタリー風に構成したノンフィクションである。冒険小説として読んでも面白い。

 これに関連して、あらたな報告書も出来している:

大阪経由で北朝鮮へ密輸か=決議違反のドイツ高級車-シンクタンク報告:時事ドットコム

シンクタンク「C4ADS」による報告書 [.pdf]: 

LUX & LOADED: EXPOSING NORTH KOREA’S STRATEGIC PROCUREMENT NETWORKS

 

4) イザベラ・バード、時岡敬子訳『朝鮮紀行講談社 (講談社学術文庫) 、2017(単行本1995)

朝鮮紀行 (講談社学術文庫)

朝鮮紀行 (講談社学術文庫)

 

 朝鮮半島を近代人の目で観察・記録したのは、偉大な旅行家イザベラ・バード(1831-1904)が嚆矢ではなかったか。1894年から1897年まで4回にわたって半島を跋渉し、日本でそうしたのと同様に、伝統的風土・民俗・文化について鋭い批評精神を向けている。必読の書。

 バードの慧眼は、現在のかの国をも見通しているようでいて、興味ぶかい。本質的に変わっていないのだろう。

このように旧態依然とした状況、言語に絶する陳腐さ、救いがたくまた革新のないオリエンタリズムの横溢する国に、本家には国をまとめる民族の強靱さがあるのに、それを持たない清のパロディたる国に、西洋による感化という動揺がもたらされたのである。このか弱い属国は何世紀にもわたる眠りからいきなり揺さぶり起こされ、なかばおびえ、また完全にとまどいながら、強力で野心があり、性急で必ずしも節度をわきまえているとはいえない列強が、押し合いへし合いしつつ自分の上に覆いかぶさっているのを知った。そして、新しい道へとむりやり連れていかれ、由緒ある慣習の弔鐘を乱暴に鳴らされ、利権をよこせとやかましくせつかれ、求めてもいなければなんの意義も見いだせない改革やら提案やら万能薬的解決策やらでめんくらわせられているのである。

  

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参考)

「世界経済にマイナスと断じるのは早計」と断言する、市況の解説などでもおなじみの真壁昭夫による記事:

president.jp

 

追記)

www.meti.go.jp

anond.hatelabo.jp