ウラシマ・エフェクト

竜宮から帰って驚いたこと。雑感、雑想、雑記。

奴隷の年と東ボヘミアの城邑

すでに師走である。パンデミックをきっかけに、社会の矛盾があばかれた年だった──などと、年の瀬の総括らしきことを書くのは容易いが、その解決の方途について見えているわけではまったくない。 12月2日は「奴隷制度廃止国際デー」だったそうである。『デジ…

西ボヘミアの醜聞──サッカー協会の腐敗

photo by Daniel Kirsch 亡くなったマラドーナは、ピッチにあがるたびに十字を切っていた姿が印象に残っている。ほんの思いつきの乱暴な仮説だが、カトリック諸国のサッカーは、ドイツやイングランドとはやはり一味ちがうのかもしれない。おしなべて「母ちゃ…

マラドーナ急逝

photo by Jack Hunter 『キャプテン翼』のノリにはちょっとついていけない、ひねくれた子どもだった。それでも、1986年のメキシコ大会におけるアルゼンチン対イングランドの一戦は、録画してくりかえし観たものだった。実況担当は、NHKの山本浩アナウンサー…

すみれの色とドーベルマン

photo by Jordan Whitt またチェコ語の話になる。相手が誰であったのかもう忘れたが、紫色の(purpurová)服かなにかを褒めたら、「これは紫ではなくて菫色だ(fialová)」と怒られたことがある。そのときから漠然と、チェコ語の文化において紫色は否定的、…

ビロード革命の記念日

photo by S. Hermann & F. Richter 今年の記念日 「マルタの祈り」 そもそも──1939年と1989年 今年の記念日 チェコ語の11月、"listopad"とは「落葉月」である旨、まえに書いたが、現代では文脈によって「ビロード革命」を意味することがある。典型的には、"p…

マサリク・サーキットの危機?

photo by Jiří Rotrekl エリシュカ・ユンコヴァー(1900-1994)といえば、初期モータースポーツにおいて名を残した、チェコスロヴァキアの女性ドライヴァーであった。2020年11月16日にGoogleの記念のロゴ“Doodle”に採用されたらしく、生誕120周年を迎えたこ…

終わりの始まりの日

photo by Jaime Serrano 最悪の事態はまぬかれた。11月10日の午前1時を期して、ナゴルノ・カラバフをめぐる紛争で、アゼルバイジャンとアルメニアとのあいだで停戦が成立した。すでに停戦監視のロシア軍部隊がすみやかに展開しおおせたらしいことから、4度目…

米大統領選挙と風前の共和国

photo by Quino Al アメリカ合衆国大統領選挙は、ジョー・バイデン候補の勝利がほぼ確実となった。あの国らしく、選挙の仕組みがフットボールのルール並みに複雑であることに加え、なにより主役を張るのはあのドナルド・トランプである。意外な接戦になった…

チェコ共和国軍、トヨタ・ハイラックス導入へ

Twitterより チェコ共和国国防省は先ごろ、GLOMEXミリタリー・サプライズ社(プロスティェヨフ市)を通じて、最大1200輛のトヨタ・ハイラックスを購入することを決定した。2年間のメンテナンスやパーツを含め、1輛あたりのコストは税込み89万3千チェコ・コル…

死者の日と晩秋の祝日

photo by Adam Nieścioruk 早いもので霜月、11月である。ローマ起源のNovemberは、かつての暦で「九番目の月」を意味するが、チェコ語やポーランド語のlistopadとは、形態素をもとに訳せば「落葉月」とでもなろうか。月がかわったとたん、紅葉した木々の葉が…

嘲笑の対象

photo by Denis Poltoradnev 春さきに南独の鉄道駅で、たてつづけに列車を逃したのち、サマータイムへ移行した当日であったことにようやく気づいたという出来事は、もうふた昔もまえの話である。おかしいなと訝ったものの、なんのことはない。1時間まえの時…

ヤン・ジシュカのザリガニ

よく一緒に飲む連中のなかに、ニュー・オーリンズの男がいた。いわゆる「ヤナーチェキアン」の音楽家で、ながくモラヴィアに住んでいるが、仕事がない時期はアメリカに帰っていたりする。あるときピヴォを飲りながら、故郷の食文化のはなしをはじめた。した…

金融歌舞伎

倍返し──とひくと、『大辞林(第三版)』には「倍の金額を返すこと。」とあるのみだ。かつては、名古屋文化圏のひとが贈答にたいして返礼を倍にするとか、三倍にして返すとかいう解説をよく聞いたものだった。説明する者もどことなくしたりげで、気前がよい…

梯子のはずし方──チェコ共和国保健相の辞任

photo by Vlad Kiselov 夏のある日、9月からマスクの着用をふたたび義務化するとTwitter上で発表したのは、チェコ共和国の保健大臣、アダム・ヴォイティェフであった。理由は、秋の新年度をひかえ、学校が再開されると同時に感染者の急激な増加がおこると予…

世代間の川

photo by timJ 慣れとは如何ともしがたいものらしく、菅内閣がうっかり「カン内閣」と誤読されてしまう傾向もとうぶんつづくのかもしれない。自身の来歴をことあるごとに開陳して、これまでの世襲政治家の政権とのちがいを強調するスガ総理だが、すなおに受…

モラヴィアびと

photo by Jindra Buzek 日本人なのか、それともアメリカ人なのかなどと、人間はとかく他者にレッテルを貼りたがる── 大坂なおみの手記を読んでふと思い出したのは、個人的なモラヴィアとの因縁である。具体的には、四半世紀も前に読んだ同様の主旨のフレーズ…

2001年の長月

photo by Steve Harvey ニューヨーク同時多発テロ事件から19年が経った。来年は20周年。911とか、セプテンバー・イレヴンとも呼ばれたものだ。リメンバー・パールハーバーのノリでもあったのであろう。さいきんターリバーンとの和平が成立し、米軍はようやく…

イジー・メンツルによる架空の村

アカデミー賞監督、イジー・メンツルが亡くなった。享年82。数年前に、髄膜炎の手術がかなり大がかりだったと伝えられていたから、その後の容態が案じられてはいた。 1938年プラハ生まれ。1962年にアカデミーの映画学部"FAMU"を卒えると、やがてチェコスロヴ…

ベルリーナー

photo by Leon Ephraïm かねてからの告知どおり、チェコ共和国のミロシュ・ヴィストルチル元老院議長が台北を訪問した。日本語メディアでもさかんに報じられている。国内でもゼマン大統領は反対、バビシュ首相は沈黙──と決して一枚岩ではない小国にも拘わら…

葉月つごもり

L'Apparition 8月も終わりで、気がつけばもう9月なのである。当たり前だが。早い。 8月29日は「洗礼者ヨハネの殉教日」であった。事件じたいは「刎首」とも呼ばれるが、正教では「斬首祭」という謂いをするらしい。要は首を刎ねられたのであるが、それを祭っ…

大衆の反逆

photo by Anne Nygård 安倍晋三内閣総理大臣が辞任の意向を表明した。このタイミングでの続投断念は、当人がいちばん無念であったろう。ストレスが大敵の難病が持病とあっては、時間の問題であったのかもしれないが。報道によると、感染症対策が世論の評価…

終わらざる晩夏

photo by Mitchell Bowser 雨安居、うあんご──とは辞書によれば、僧が寺に籠もっておこなう雨季の修行で、夏安居、夏行、夏籠り、夏断とも呼ぶ。陰暦4月16日から90日間ともいう。感染防止の自粛要請とは関係もなく、そもそもこの時節は雨天がつづいたり、は…

プルゼニュのパットン記念館

photo by Ye R プルゼニュ市の〈パットン記念館〉を訪ねたのは、もう何年も前である。2005年に複合施設「ペクロ(地獄)」内に開設された資料展示館であった。ことし6月の報道によると、その古びた「地獄」とは仮の住まいであった由で、もとより本来の物件の…

マター=オヴ=ファクト

photo by Carina Chen 夏のある日。翌日にはダブリンを発つ予定だった。ファーストフードの昼食を終えようというとき、にこにこしながらそいつはやってきた。──チャイニーズかい、とはまたご挨拶だ。そう訊かれると、心外だな、と感ずるのがわれら日本人の心…

アメリカの王子

photo by Benjamin Rascoe あの夏、プロヴァンスを訪れる前、アメリカ合衆国にいた。 シカゴ・オヘアー空港に着いたとたん、日本やヨーロッパとの違いに戸惑った。アメリカは「でかい国である」とか「自助努力の国である」と俗に言うのは知ってはいても、現…

恐怖の大王

photo by Diederik Smit 南欧の夏は、日本ほどの降水量はない。したがって湿度が低いから、日中は鎧戸を閉め切っておけば室内温度の上昇をふせぐことができ、家屋内は暗いがすごしやすい。気候変動の影響で常識も変わりつつあるが、あの夏はまだそういう事情…

アードルフ・ロース生誕150周年

当世の流行りとはいえ、銅像を打ち倒す運動には賛同しかねる。偉大な篤志家であったが奴隷も所有していた──ということになると、ヴァンダリズムの対象になるらしい。だが、200年も300年も遡及して往時の常識を今日の価値観で断罪することに、妥当性は微塵も…

オリンパスE-P1

「オリンパス、カメラ事業を売却へ」の報に接した。たまたま、イタリア語の文法をやさしく解説してくれている本を読んでいて、最初の例文が「ローマは永遠なり」を意味する《Roma è eterna.》だった。だが、永遠につづくものなどないのだ。 思いかえしてみる…

3日でおぼえるアラビア語

photo by Tamarcus Brown 俄雨に降られた。もう夏である。夏といえば選挙……というわけでもないが、参議院選挙を連想してしまう。けれど目下の話題は、7月に投開票を控える東京都知事選挙だ。そして選挙がちかづくと、いまやウェブにもゴシップとも誹謗ともつ…

チェコ軍の次期装輪式自走砲〈CAESAR〉

ことし令和2年度の富士総合火力演習は、疫禍の時世から招待客なしでとり行われ、かわりに5月23日、YouTubeでライヴ映像配信が実施された。そこには昨年につづいて、最新鋭〈19式装輪自走155mmりゅう弾砲〉の姿があった。国土の道路網の整備がすすんだ結果、…